トランシーバーにはさまざまな種類があり、それぞれ免許が必要なタイプと不要なタイプに分けられます。また、免許が必要なトランシーバーを利用する場合は申請方法が複雑です。
今回は、トランシーバーを使用する際に免許が必要なトランシーバーと不要なトランシーバーの紹介や免許の申請手順について解説します。また、免許の申請にかかる費用についても解説しますので、トランシーバーの免許取得を検討している方は、ぜひ最後までご覧ください。
何かご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
トランシーバーの使用には免許が必要?
トランシーバーには、免許の取得が必要なタイプと不要なタイプがあります。ここでは、それぞれに該当するトランシーバーを紹介します。
免許が不要なトランシーバー
免許が不要なトランシーバーは「特定小電力トランシーバー」と「IP無線機」の2種類があります。ここでは、それぞれの特徴について解説しますので、免許を取得せずにトランシーバーを利用したい方は参考にしてください。
特定小電力トランシーバー
特定小電力トランシーバーは、免許不要で初心者でも簡単に利用できるトランシーバーです。飲食店やイベント会場など、比較的狭いエリアでの通信に適しています。
特定小電力トランシーバーの通信距離は最大500mほどと短く、障害物があると電波が遮られやすい点がデメリットです。
しかし、中継装置を使えば1km程度まで通信範囲を広げられます。通信距離は環境によって変わるので、事前の確認が大切ですが、コストパフォーマンスに優れた無線機として、幅広い用途で活躍しています。
IP無線機
IP無線機は、携帯電話回線を利用したトランシーバーです。全国的な通信範囲を誇り、屋内外を問わずに安定した通話が可能なため、業務の効率化と生産性の向上に貢献します。
IP無線機の特徴は、携帯電話のデータ通信網を利用して音声をパケットデータに変換し、送受信する点です。これにより、遮蔽物による影響やほかの通信機器との混信を回避できます。さらに、一斉送信や個別通話、GPS位置情報サービス機能など、多彩な機能を備えています。
ただし、携帯電話がつながらない山間部や地下では使用できないといった点がデメリットです。また、毎月の通信費がかかるため、コスト面での考慮も必要です。
免許が必要なトランシーバー
免許を取得する必要のないトランシーバーがある一方、以下のような免許が必要なタイプもあります。
● 簡易業務用無線
● 一般業務用無線
● MCA無線
● アマチュア無線機
ここでは、上記の特徴について解説します。
簡易業務用無線
簡易業務用無線にはデジタル方式とアナログ方式の2種類があり、350MHz及び400MHz帯のアナログ方式は2024年12月1日以降使用できなくなります。デジタル式の簡易業務用無線は、免許局と登録局の2種類があり、登録局は電波法改正により登録人以外でもレンタルできるようになりました。
しかし、登録人以外が登録局を使用する場合は届け出が必要な点に注意が必要です。免許局と登録局の違いは、チャンネル数と周波数帯です。免許局は150MHz帯と460MHz帯を使用し、登録局は351MHz帯を使用します。
一般業務用無線
一般業務用無線機は、公共用と一般企業用に分けられ、さまざまな業種で活用されています。公共用は鉄道やバス事業、警察・消防など生活に密着した事業で使われ、一般企業用は運送やタクシーなどで利用されています。
一般業務用無線機は業種や用途が限定されているため、簡易な業務やレジャーでは免許を受けられず、使用も認められていません。会社で業務用無線を使用する場合、無線従事者免許を持っている人を配置しなければなりません。
ただし、タクシー業界では、指令局に無線従事者免許保持者がいれば、ドライバーは免許を取得しなくても問題ありません。
MCA無線
MCA無線機は、全国に設置された中継局を介して通信をおこなう無線機です。直接電波の送受信をおこなうタイプとは異なり、専用の通信網を利用するため、混信や回線の混雑が起きづらいにくいのが特徴です。
全国に114か所ある中継局は、1か所につき20km〜40km程度のエリアをカバーしており、契約内容によっては全国での通信が可能となります。業務用無線機とは違い、既存の中継局を利用するため、アンテナ設置などの初期費用がかかりません。
MCA無線機の中継局では、利用者に自動的に空きチャンネルを割り当てられます。しかし、限られたチャンネルを効率的に振り分ける必要があるため、1回の通信時間は3分〜5分に制限されています。
利用者は無線従事者免許を取得する必要はありませんが、無線局の免許は取得・更新が必要です。
アマチュア無線機
アマチュア無線は、個人的な趣味や研究目的で使用する無線通信手段です。アマチュア無線技士の資格を取得し、無線局免許状を申請することで、アマチュア無線機を使用できるようになります。資格には第4級から第1級まであり、級によって無線機の使用範囲が異なります。
アマチュア無線の特徴は、維持費用がほとんどかからない点や、緊急時や災害時に便利である点です。また、インターネットとは異なり通信料がかからないため、海外の人との通話や長時間の会話も安価で楽しめます。
トランシーバーの免許を申請する流れ
トランシーバーの免許を取得する際は、以下の流れに沿っておこなう必要があります。
● 申請書の準備
● 申請書類の審査
● 予備免許の付与
● 検査
● 免許状の交付
上記の流れについて詳しく解説します。
手順1:申請書の準備
申請書は、総務省のホームページからダウンロード可能です。申請書のほかに無線局開設の目的や設備の設置場所、使用する無線機の工事設計などの必要事項を示す添付書類を準備します。
申請書と必要書類は、無線設備を設置している地域の総務省総合通信局へ提出します。申請には手数料が必要で、収入印紙を購入して申請書に貼り付ける必要がある点に注意が必要です。
手順2:申請書類の審査
提出後は、総務省総合通信局にて審査が行われます。審査では、以下の4点が重点的にチェックされます。
● 電波法に定められた基準への適合性
● 添付資料の内容
● 周波数の割り当て可能性
● 総務省令で決められている開設基準との一致
審査期間は通常3週間から1か月程度です。審査に通過すると、以下の情報が登録されます。
● 申請者の氏名・名称および住所(法人の場合は代表者の氏名)
● 無線設備の規格、設置場所(移動する場合は移動範囲)
● 周波数および空中線電力
● 登録年月日と登録番号
手順3:予備免許の付与
総務省総合通信局による審査で、電波法令への適合性が認められると「予備免許」が交付されます。これは本免許に先立つ仮免許のような位置付けのもので、以下の目的で発行されます。
● 実運用に向けた機器の調整
● 無線設備の設置
● 試験電波の発射
予備免許は、実際の業務での使用を許可するものではありません。予備免許の期限までに工事が完了せず、検査を受けられない場合、本免許の交付は行われないため注意が必要です。
手順4:検査
予備免許の交付後、無線設備の設置工事が始まります。工事完了後は、総合通信局に「落成届」を提出し、落成検査を受けなければなりません。落成検査では、主に以下の点がチェックされます。
● 無線設備の法令適合性
● 無線従事者の資格保有者数
● 備え付けが必要な書類と時計の確認
落成検査は、予備免許を受けた無線局開設者が工事完了後に総務大臣への届け出を行い、無線設備等が予備免許の内容および法令に適合しているかどうかを確認するものです。
手順5:免許状の交付
総合通信局による落成検査と審査に合格すると免許が交付され、正式な無線局の運用が可能になります。MCA無線の陸上移動局や簡易無線局、アマチュア無線局など、簡易的な無線で技術基準適合証明を取得している場合は、予備免許と落成検査の手続きが省略されます。
交付された無線局免許には有効期限があり、アマチュア無線局、陸上移動局、簡易無線局の場合は5年間です。更新手続きは、有効期限の数か月 3か月前※から再免許申請書を提出することで行われます。
※種別によって異なりますが6ヵ月~1ヵ月前に提出が必要です。
トランシーバーの免許申請にかかる費用
トランシーバーの免許申請をする際の費用は、申請方法によって異なります。ここでは、窓口申請と電子申請の費用について解説します。
窓口申請
トランシーバーの免許を窓口で申請する場合、必要な費用は以下の表となります。
基本送信機の規模(空中線電力) | 新規免許申請 | 再免許申請 |
---|---|---|
1W以下 | 3,550円 | 1,950円 |
1W以上5W以下 | 4,250円 | 3,350円 |
5W以上10W以下 | 6,700円 | 4,950円 |
10W以上50W以下 | 14,600円 | 6,700円 |
50W以上500W以下 | 25,500円 | 9,700円 |
500W以上 | 30,200円 | 12,700円 |
トランシーバーの免許を申請する場合、申請手数料が発生しますが、窓口申請では収入印紙での納付となります。また、新規の申請と再免許申請では必要な費用も異なるため注意が必要です。
電子申請
電子申請でトランシーバーの免許を取得する場合の費用は、以下の表となります。
基本送信機の規模(空中線電力) | 新規免許申請 | 再免許申請 |
---|---|---|
1W以下 | 2,550円 | 1,500円 |
1W以上5W以下 | 3,050円 | 2,400円 |
5W以上10W以下 | 4,500円 | 3,250円 |
10W以上50W以下 | 10,400円 | 4,500円 |
50W以上500W以下 | 17,000円 | 6,500円 |
500W以上 | 19,300円 | 8,700円 |
電子申請にて申請手数料を支払う場合、ペイジーシステムを利用してATMやインターネットバンキングで納付します。金額も窓口申請と比較すると安価で済む点が特徴です。
まとめ
トランシーバーには、簡易業務用無線機やMCA無線機といった免許が必要なタイプと特定小電力トランシーバーやIP無線機などの不要なタイプの2種類があります。免許が必要な場合、総務省のホームページから申請書をダウンロードし、必要な書類の準備が必要です。
免許の申請にかかる費用も申請方法や送信機の規模によって異なるため、トランシーバーの免許を取得する際は、申請の流れや必要な費用を把握したうえで進めていきましょう。
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