簡易業務用無線機のデジタル化により、2024年12月1日からアナログ簡易無線局は使用できなくなります。また免許の更新や無線機の故障などにより、新たな無線機の買い替えを検討されている方も多いのではないでしょうか。
この記事では、IP無線機のデメリットについて紹介します。ほかツールとの比較や選び方も解説しますので、IP無線機とほかツールを比べながら、業務に合った最適な無線機を選びましょう。

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IP無線機とは

IP無線機とはモバイルデータ通信網を使用して通信を行う無線機です。IPトランシーバーやLTEトランシーバー、PoCトランシーバーなどとも呼ばれています。IPとは、インターネット・プロトコルの略です。
プロトコルとは通信上の決まりごとです。ホームページの閲覧やファイルのダウンロード、動画の送信などの際に使用されるルールです。

IP無線機ではプロトコルというルールにしたがって、携帯電話のデータ回線を使い、音声通話を行います。通話の内容をデータに変換してから相手のいる場所に届ける仕組みです。
従来の無線機は電波を相互に飛ばし合って連絡を取っていたため、障害のある場所では通話できないのが難点でした。一方、IP無線機はキャリアのネットワークを利用するため、契約したキャリアの電波が届く場所ならどこでも通話が可能です。
電波が届く範囲なら障害がある場所でも通話できます。従来の無線機の問題点であった障害物に弱い部分を、IP無線機ならカバーできます。

IP無線機のデメリットとは?

IP無線機には3つのデメリットが存在します。以下で詳しく解説します。

デメリット1:月額費用が発生する

IP無線機は月額費用が発生します。モバイルデータ通信を利用するため、携帯端末と同じく通信事業会社と契約する必要があるからです。
そのため、機材代のほかにも月々の利用料金を支払う必要があります。モバイルデータ通信を使用している証拠として、無線機にはSIMカードが入っています。

ただし多くの無線機販売、レンタル会社では、機材代と通信の利用料金込みの定額レンタル制を採用しています。1日や7日、15日、60日など好きな期間でのレンタルが可能です。契約した期間ならいくら使用しても利用料金を超えることはありません。

デメリット2:キャリアのサービスエリア外では通信できない

IP無線機はキャリアのサービスエリア外では通信できません。キャリアのサービスエリアは年々拡大していますが、すべてのエリアをカバーできているわけではありません。
IP無線機は通話内容をデータ化して相手に届けています。データは直接相手の無線機に届くわけではなく、基地局や交換局を通して相手に到達しています。

基地局は無線機のデータを受信し、交換局に届ける中継器の役割を持っています。データを交換局が受け取り、通信相手の近くにある基地局に届けて、はじめて通話が可能となります。
キャリアの基地局は多くの場所に設置されていますが、山奥や地下など基地局が設置されていない場所では、たとえ相手が近くにいたとしても通信はできません。携帯端末の電波が圏外になる場所は、無線機も届かない可能性があります。

デメリット3:通信障害の影響を受ける

頻繁ではありませんが、日本ではキャリアの通信障害がたびたび発生します。キャリアの通信網を利用している無線機も影響を受けてしまうため、通信がしばらく使えなくなる可能性があります。
キャリア障害が起こる多くの原因が、サーバーやケーブルなどの電気通信設備の故障です。たとえば人為的なものであげれば、メンテナンス時の設定ミスです。すぐに解決できればよいですが、なかには復旧に時間がかかるものもあります。

そのほかの原因とは、キャリアにアクセスが集中し、通信できなくなる場合もあります。たとえば、災害の発生時や年末年始、花火大会や人気の公演の入退場時などです。

IP無線機のメリットと他無線機との比較

IP無線機のメリットをほかの無線機と比較しながら解説します。ほかの無線機も検討している方は、ぜひ違いを比べてみてください。

メリット1:通信距離の制限がない

IP無線機は通信距離の制限がありません。特定小電力無線機は100〜500m、デジタル簡易無線機は1〜5kmしか届かず、距離をのばすためには中継器を使用する必要があります。
一方、IP無線機はキャリアの電波を使用します。契約したキャリアの電波が届く範囲であれば、日本中どこでも通話が可能です。北海道と沖縄のように離れていても使えるので、長距離間の通信に最適です。

またIP無線機は、混信が発生しません。特定小電力トランシーバーやデジタル簡易無線機は、直接相手に電波を飛ばし通信するため、近くで同じチャンネルを使用している無線機と混信し、通常時より通信距離が短くなることもあります。
相手との距離が遠くなるほど、電波が不安定になり、ノイズや途切れが発生します。IP無線機は、どれほど離れていても、ノイズや混線はありません。災害時の連絡やトラブルの対応など、緊急性が求められる状況でも役立つ可能性があります。

メリット2:通信が安定している

IP無線機は通信が安定しています。特定小電力無線機やデジタル簡易無線機は、障害物の影響を受けてしまうため、フロアをへだてると通信が不安定になりやすいのが特徴です。
一方、IP無線機は障害物や通信距離の影響を受けません。フロアをへだてた場所や地下での会話も問題ありません。
地下でも通信が安定する理由は、日本全国に携帯電話のデータ通信網である以下のような基地局が設置されているからです。

  • ・郊外に設置されて広範囲のデータ網をカバーする鉄塔型
  • ・ビルやマンションの屋上に設置されているビル型
  • ・電柱に設置される小型基地局
  • ・地下鉄や地下街などの電波が届きにくい範囲をカバーする屋内基地局

日本中にさまざまなタイプの基地局が設置されています。障害物がある場所や地下、高層ビルなど、電波が届きにくそうな場所であっても設置されています。そのため、通信が安定しており、IP無線機は地下街や高層ビル内での利用にも最適です。

メリット3:セキュリティが高い

IP無線機は通信の際にIPアドレスを使用しているため、セキュリティが高いのが特徴です。IPアドレスとはインターネット上の住所です。
配達をする際に相手先の住所を伝票に書かないと届きませんが、IPアドレスも同じように住所がないと通話が届きません。そのため、IPアドレスを指定して通信を届けています。

特定小電力無線機やデジタル簡易無線機は、直接相手に電波を届けて通話するため、その間にいる相手が無線機を使用していた場合に会話を傍受されるリスクがあります。これを混信といいますが、反対に相手の無線機の内容がこちらに届く場合もあります。
とくに機密性が高い内容のやり取りをしていた場合に、聞かれてしまっては業務に影響をきたしかねません。情報漏洩対策のためにも、通話を行う相手だけに電波を届けるIP無線機が最適といえます。

メリット4:チャンネル数に制限がない

業務用無線機はチャンネル数が多いため、混戦しにくいのが特徴です。一方、IP無線機は、はじめからチャンネル数に制限がありません。ただし、機種やプランによっては例外もあります。
チャンネル数というのは周波数と同義です。発信側と受信側の周波数を合わせることで会話できる仕組みです。

しかし、使用のたびに周波数を調整するのは手間なため、はじめからひとつの周波数にひとつのチャンネルが設定されています。使用者は周波数を気にせずに、チャンネルを合わせるだけで会話できる仕組みを取っています。
一般的な業務ならチャンネル数もそれほど必要ありません。しかし、大きなイベントや国際大会などの来客数が多い現場や会話の秘匿性が求められる現場では、混線はさけたいところです。

また会場の管理者が、周波数を規制する可能性があります。チャンネル数に制限がないIP無線機は、周波数が制限される現場で役立ちます。

IP無線機の種類は?

IP無線機にはさまざまな種類があります。以下で詳しく紹介します。

ハンディ型IP無線機

ハンディ型IP無線機は端末のサイズが小さく、比較的軽量です。手になじむため、片手での操作でも不便は感じません。
長時間の使用でも負担が少なく、端末によってはポケットに入れる、ストラップをつけてぶらさげて使用できます。バッテリー稼働時間は約12〜17時間、それ以上使う場合は、バッテリーの充電が必要です。GPS機能付きの端末もあります。

車載型IP無線機

車載型IP無線機は機種本体にマイクがついているのが特徴です。車内に設置するため、バッテリーは車の電源から補給できます。
車載型は、マイクやハンズフリー機能を使用している場合は道路交通違反とはなりません。そのため、タクシーやトラックの運転時でも使用できます。

ただしIP無線機を使用中に事故を起こした場合は、安全運転義務違反となり、罰則を受けてしまいます。使用時には取り扱いに注意しましょう。

IP無線アプリ

IP無線アプリは、携帯端末に専用のアプリをダウンロードすることで、無線としての利用が可能な無線機です。IP無線機と同じくキャリアの通信網であれば、どこでも通信が可能です。学園祭やホテルのような、無線機の利用が懸念される場所の利用に向いています。

IP無線機の選び方は?

市場にはさまざまな製品があるため、選択肢の多さからどの端末を選ぶべきか迷ってしまう方も多いでしょう。以下で、IP無線機を選ぶ際のポイントを紹介します。

セキュリティの対策

直接電波を送り通信する従来の無線機と比べて、音声をデータ化して相手に届けるIP無線機はセキュリティ対策が高いのが魅力です。さらに昨今の無線機の販売会社は、機密性を高めるために独自のセキュリティ対策を行っています。
たとえばデータの暗号化です。データを暗号化することで、通信内容が第三者に傍受されず、セキュリティが向上します。最新のセキュリティ対策を講じている端末なら、情報漏洩のリスクをさらにおさえられます。

重量やサイズ感

無線機を選ぶ際に重量やサイズ感は重要な要素となります。軽量でコンパクトな無線機は、端末を持ち運びやすく、操作しやすいという特徴があります。
またワイヤレスな種類を選べば、機動性が求められる現場でも重宝されます。大型で重い無線機は快適性をそこなうだけなく、転倒時の事故にもつながりかねません。

データの通信料

IP無線機はキャリアと契約を結び、データ通信により通話が可能となるため、毎月のデータ通信料が発生します。購入の場合は、月額通信料の相場は約1,500〜2,000円です。そのほか、端末購入費用60,000〜100,000円が発生します。そのため、予算に合わせた端末選びが重要です。

データ通信料の負担をおさえたい方におすすめする端末は、IP無線機アイコムの「Withcall Biz」です。無線機販売代行会社のジャパンエニックスで取り扱っており、月額利用料が発生しない仕組みを取っています。

端末本体を購入時に、通信回線がサービスで含まれるため、無線機導入のコストをおさえられます。利用期間は延長でき、初期費用をおさえられるサブスクリプションプランもあります。とくに簡易業務用無線機のデジタル化で無線機の移行を検討している方に最適です。

独自機能

無線機には独自機能が搭載されていますが、業務内容や利用シーンによって必要となる機能は異なります。たとえば防水・防塵性能が搭載された端末は、屋外や厳しい気象条件での使用に適しています。
デュアルSIM機能のある端末は、2つのSIMカードを搭載できるため、任意のキャリアを切り替えられます。ひとつのキャリアで通信障害が発生しても、ほかのキャリアに切り替えれば、通信が不安定になるリスクを回避できます。業務に合った機能を選べば、作業を効率化できます。

まとめ

IP無線機はチャンネル数が多いため、周囲の環境によって使用を制限されまません。一方、業務用無線機では登録局の場合はキャリアセンスが発生してしまい、使いたいときに使用できません。
免許局の場合は免許の取得手続きが必要ですが、手続きが手間と考える方もいるため、免許や登録の必要のないIP無線機が重宝されています。

ジャパンエニックスではIP無線機を取り扱っております。IP無線機アプリや月額料金が発生しない端末、キャリア通信障害が発生したときにも対応できるデュアルSIM対応の端末など、ニーズに合わせてご用意しています。無料でテスト運用ができるデモ機もご利用いただけるため、ぜひお気軽にご相談ください。

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