特定小電力トランシーバーの中継器は、トランシーバーからの電波を中継し、発信する電波をより遠くへ届けます。その結果、より遠距離での通話が可能となり、建物などの階をまたいだ通信もできるようになります。
しかし、使っているトランシーバーと中継器の間に互換性がない場合、本来の機能を発揮できなくなってしまいます。本記事では中継器を使うメリットに加えて、使用の際に注意すべき点や中継器以外の通信距離の伸ばし方を解説します。
何かご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
中継器とは
中継器は電波の伝達を補助する装置であり、トランシーバー同士の通信を円滑にするために設置されます。「リピータ」とも呼ばれており、無線LANの範囲を広げる際に使用される中継器と同様の原理で動作します。
中継器は送信された電波をキャッチし、より強力な信号として再送信して、電波を通常よりも広範囲に届けることが可能です。つまり、通信相手が通常の特定小電力トランシーバーの通信可能範囲外にいても、中継器を介すれば電波を届けることが可能になります。
このように中継器は、遠く離れた場所同士の通信を実現する重要な役割を果たしています。
中継器を利用するメリット
中継器を利用するメリットは、以下の3点が考えられます。
- ●通信距離を伸ばせる
- ●障害物があっても通話ができる
- ●免許不要で利用できる
トランシーバーを利用する際に多くの人が感じる「電波が悪くて通話ができない」や「高出力のトランシーバーを使用するには、免許が必要で手続きが大変」などの悩みを解決に導きます。
メリット1:通信距離を伸ばせる
中継器を用いれば、特定小電力トランシーバーの通信距離を伸ばせます。一般的な特定小電力トランシーバーは、約200メートルの距離までしか通信できないといわれています。しかし中継器の助けを借りれば、通信範囲を約2倍に広げられます。
通信できる距離を伸ばせば、離れた場所であっても通話ができるようになります。遠距離でやり取りをする、あるいは1階と2階など異なる階で通話する際は、中継器は大いに役立つでしょう。
メリット2:障害物があっても通話ができる
特定小電力トランシーバーは、建物などの障害物によって電波が遮断されやすいです。しかし中継器を使用すれば障害物をうまく回避し、電波の通過路を確保できるようになります。
中継器の活用によって電波の伝達効率が向上するため、通信範囲内であれば障害物があってもストレスを感じない通話を実現できるでしょう。有線接続を備えた中継器を使用する場合、障害物を無視して電波を送信することも可能です。
たとえば壁によって遮られたエリア間でも、中継器で壁を越えた通信が実現します。このように中継器は、電波が障害物によって遮られる問題を解決し、安定した通信環境をもたらします。
メリット3:免許不要で利用できる
特定小電力トランシーバーの中継器の使用には、特定の免許取得が求められていません。一般的に免許の取得には、手数料や定期的な更新が求められるため、それらが負担となるおそれがあります。
しかし、特定小電力トランシーバーの中継器は、このような費用や手間をかけずに通信距離を延長できるため、非常に経済的です。免許不要のため、早急に通信距離を伸ばさなければならないような事態に陥っても、迅速かつ容易に通信環境の改善や拡張を行えます。
中継器を利用する際の注意点
通信範囲を拡大する目的で中継器を利用する場合、いくつかの点に留意が必要です。とくに、すべてのトランシーバーが中継器と互換性を持っているわけではないため、事前に機器の対応状況を確認することが欠かせません。
とくに短距離通信を前提として設計され、コスト削減のために機能が限定されているモデルでは、中継器を利用できない可能性が高いです。
トランシーバーと中継器の対応情報に加えて、メーカーやモデルの互換性にも注意を払う必要があります。異なるメーカー間では、互換性が限られる場合があるためです。
したがって、特別な事情がない限りは、トランシーバーと中継器を同一メーカーから選ぶとよいでしょう。しかし、同じメーカーの製品であっても、製造時期やモデルによっては対応していない場合も存在するため、購入前の確認は不可欠です。
中継器の導入を検討する際には、製品の仕様書や公式ウェブサイトで対応状況を確認すること、またはメーカーや販売代理店に問い合わせましょう。前もって確認すれば「中継器を買ったのに、まったく使えなかった」という事態を避けられます。
中継器で通信範囲を拡大できる一方で、使用するトランシーバーと中継器の間に互換性がないと使用できない可能性があります。中継器を効果的に使用するためにも、購入前に機器の対応状況を入念に調べることをおすすめします。
中継器の選び方
中継器を選ぶ際は、使用するトランシーバーが対応しているかを確認することが大前提です。中継器メーカーの特徴を考慮し、適切な中継器を購入しましょう。
今回の記事では、中継器を生産する6つのメーカーの特徴を紹介します。中継器選びの参考にしてください。
メーカー名 | 特徴 |
---|---|
モトローラ・ソリューションズ株式会社 | 世界シェアNo.1を誇る無線機メーカー 100カ国以上の顧客に高品質・高耐久性の無線ソリューションを提供 |
バーテックススタンダードLMR合同会社(STANDARD) | 信頼できる業務用無線機を揃え、顧客の要望に応じた堅牢かつコンパクトな無線機の開発に注力。FTHシリーズが有名 |
株式会社JVCケンウッド | オーディオメーカーとしての経験を活かし、肉声に近い通話品質を実現した無線機を提供。 世界的にも認知されている国内メーカー |
アイコム株式会社(ICOM) | 国内生産にこだわり、アマチュア無線機やIP無線機、衛星通信無線機まで幅広い無線機を生産する総合メーカー |
八重洲無線株式会社(STANDARD HORIZON) | アマチュア無線の老舗メーカー。顧客が抱えている悩みを理解して要望に沿った無線機を開発 |
アルインコ株式会社(ALINCO) | 無線技術を用いて安心と安全を提供する独自の経営方針を持つメーカー。オリジナリティあふれる商品群が魅力 |
中継器以外で通信距離を伸ばす方法
特定小電力トランシーバーの通信距離を伸ばすための有効な手段は、中継器を使用することです。しかし、中継器を使用せず、通信距離を伸ばす方法もいくつか存在します。具体的には、以下3つの方法です。
- 1.ロングアンテナに変える
- 2.高出力トランシーバーに買い替える
- 3.トランシーバーが機能しやすい環境にする
中継器に対応していないトランシーバーしか所有していない場合は、上記の方法を試してみましょう。
方法1:ロングアンテナに変える
トランシーバーの通信範囲を広げるためには、標準のアンテナを「ロングアンテナ」に買い替える交換する手段が有効です。ロングアンテナにすればアンテナの物理的な長さが増え、電波の送受信能力の向上につながり、結果として通信距離が伸びます。建物の階を超えるような状況や、わずかな距離でも通信が不安定になる場合にロングアンテナの利用が役立つでしょう。
ただし、アンテナを長くするとトランシーバーの重量が増加し、持ち運びが不便になる可能性があります。重くなる点を考慮したうえで、ロングアンテナの利用を検討しましょう。
方法2:高出力トランシーバーに買い替える
中継器を使用できない場合、出力の高いトランシーバーに買い替えるのも有効な解決策です。高出力のトランシーバーにすれば通信範囲を拡大し、より広いエリアでの通信が可能です。
買い替えに際して、注意すべき点が2つあります。1つは、出力が1Wを超える無線機を利用する場合、総務省による免許が必要になる可能性がある点です。免許取得には申請料金が必要となり、さらに定期的な更新も求められるため負担となるおそれがあります。
2つ目の注意点は、高出力の無線機への買い替えには、初期投資として相応の費用が必要となる点です。また、将来的に中継器を導入する場合は、設置にともなう費用も考慮する必要があるでしょう。
高出力トランシーバーに買い替える場合は、通信範囲の拡大が必要な理由と、コストのバランスを慎重に検討することが重要です。
方法3:トランシーバーが機能しやすい環境にする
トランシーバーの性能をうまく引き出すためには、周囲の環境を整えることが重要です。たとえば屋内でトランシーバーを利用する際は、窓やドアを開けると電波の通り道を確保できます。
窓や壁は電波を吸収したり反射させたりするため、開放すると通信の安定性が向上します。さらにパソコンや電子レンジ、冷蔵庫といった電波に影響を与える可能性のある家電製品から離れた場所での使用を心掛けると、通信品質の改善が期待できます。
また、使用場所の選定も注意が必要です。とくに金属製の物体は電波を反射させる性質があるため、金属が多く存在する場所では通信が不安定になりがちです。
したがって、トランシーバーを使用する際は、金属製の家具や建材が少ない場所を選ぶ、または金属製品から離れた場所で通信することが望ましいです。電波が直接反射されることなく、より遠くまで届きやすくなります。
環境を整えることは、費用をかけずにトランシーバーの性能を向上させる効果的な方法といえるでしょう。
まとめ
特定小電力トランシーバーの中継器は、トランシーバーの通信距離を伸ばす役割を担っています。使用に際して特別な免許は不要で、階をまたいだ遠距離通信を可能にするメリットがあります。
一方で、特定小電力トランシーバーのなかには、中継器に対応していないものも多くあります。トランシーバーと中継器に互換性がない場合、中継器がうまく機能せず通信距離を伸ばせません。そのため、購入前には互換性をきちんと確認する必要があります。
「持っているトランシーバーに対応している中継器がわからない」と悩んでいるなら、ジャパンエニックスにご相談ください。お客様の悩みや要望に沿った無線機・アクセサリをご紹介します。ご紹介した機器はその場で試用できますので、ご自身の悩みを解決できるか判断してから購入することが可能です。
まずは無線機の使用に関するお悩みだけでも、いつでもお気軽にご相談ください。