無線機は業務の効率化や安全面の向上だけでなく、レジャーなど幅広いシーンで活躍します。なかでも特定小電力トランシーバーは、小型かつ軽量でありながら免許や登録申請が不要なため、気軽に利用が可能です。
しかし、周波数や注意点を理解していなければ通信ができなかったり、電波法に抵触してしまったりといったトラブルが起きてしまう場合もあります。
そこで今回は特定小電力トランシーバーの周波数と注意点、選ぶ際のポイントを解説します。ほかの無線機との違いやメーカーごとのチャンネル互換表も紹介していますので、特定小電力トランシーバーの効果的な使用に役立ててください。
何かご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
特定小電力トランシーバーの周波数一覧
周波数とは、1秒間に繰り返される波の数です。Hz(ヘルツ)という単位を使い、特定小電力トランシーバーを含む多くの無線機では、MHz(メガヘルツ)帯が使用されます。1,000,000Hzで1MHz相当です。
特定小電力トランシーバーが使用するのは、以下の周波数です。
・422.2MHz~422.3MHz
・421.8125MHz~421.9125MHz
・440.125MHz~440.25MHz
・442.05MHz~422.1875MHz
・422.1875MHz
・421.575MHz~421.8MHz
・440.125MHz~440.25MHz
・421.8MHz、440.25MHz
・413.7MHz~414.14375MHz
・454.05MHz~454.19375MHz
次の項では、周波数帯について解説しています。
特定小電力トランシーバーの周波数帯
特定小電力トランシーバーは、機種ごとの機能や通信方式によって周波数が異なります。ここからは、3つの通信方式についての解説です。
単身方式
1つ目は、多くの特定小電力トランシーバーが該当する単信方式です。受信機と送信機を切り替えながら通信します。お互いが同時に話したり、相手の会話を遮ったりできないのが特徴です。プッシュトゥートークやプレストークとも呼ばれます。
周波数は、業務用の場合11チャンネルで422.05〜422.175MHz、レジャー用の機種では9チャンネルで422.2〜422.3MHzとなっていることが多いです。ただし現在はどちらの用途で利用しても問題ありません。
複信方式・半複信方式
2つ目は、複信方式や半複信方式です。複信方式は双方が同時に通信できる仕組みで、電話と同じような通信ができます。
ただ、同時に通話できる特定小電力トランシーバーの台数は3台程度までで、10mWの送信出力で使用する場合は、3分で通信が切れるといった制限が法律で定められています。
半複信方式は単信方式と複信方式の中間にあたる通信方式です。特定小電力無線専用の中継器を使って、交互に通信を行います。中継器は受信した電波をさらに大きな出力で送るため、通信距離を伸ばすことが可能です。
同時通話の機能が搭載されている無線機は、同時通話無線機とも呼ばれます。
周波数は、業務用が18チャンネルで421.575帯~421.7875MHz帯か440.025~440.2375MHz帯が多く、レジャー用は9チャンネルで421.8125帯~421.9125MHz帯、440.2625帯~440.3625MHz帯が利用されます。こちらも現在はどちらの用途で利用しても問題ありません。
単信方式と複信方式の両方
3つ目は、単信方式と複信方式の両方が使えるタイプです。どちらでも使用できるため業務用、レジャー用ともに優れていますが、希少であり比較的高価になっています。
特定小電力トランシーバー以外の周波数
この項では、以下の3つの無線機の周波数を紹介します。
・簡易業務用無線機
・デジタル簡易無線機
・IP無線機
それぞれの無線機の周波数と特定小電力トランシーバーの周波数の違いを確認してください。
簡易業務用無線機
免許が必要なタイプのアナログの簡易業務用無線機には、極超短波であるUHFと超短波のVHFの2種類があり、さらに細分化され周波数も異なっています。
UHFは465.0375MHz帯〜468.85MHz帯の周波数を35チャンネルに、VHFは154.45MHz帯〜154.61MHz帯の周波数を9チャンネルに割り当てています。
注意点として、簡易業務用無線機を対象に400MHz帯および350MHz帯のアナログ無線は、電波法改正により2024年12月1日から使用禁止となります。VHF帯150MHzは、期日が決まっていません。アナログ簡易業務用無線局のデジタル化についてはこちらの記事をご確認ください。
https://www.jenix.co.jp/special/digitalization/
期日以降は、デジタルとあわせて使用できるデジタル・アナログ両モード搭載デュアル無線機の場合も、アナログ発信ができないよう停波措置を行う必要がありますので気をつけましょう。
デジタル簡易無線機
簡易業務用無線機のなかでも、デジタル通信方式を使ったデジタル簡易無線機は、アナログよりも音質がよく、盗聴や傍受などのリスクが少ないことが特徴です。
登録局と免許局の2つの無線局があり、大きく異なるのは用途や申請方法です。登録局のデジタル簡易無線機は、30チャンネルで351.16875MHz帯〜351.38125MHz、上空では5チャンネルで351.16875MHz帯〜351.38125MHzになっています。
免許局は、デジタルUHF簡易無線機が65チャンネルで467.0MHz帯〜467.4MHz、
デジタルVHF簡易無線機は9+9チャンネルで154.44375MHz〜154.6125MHzを利用しています。
なお、デジタル簡易無線機の高度化への関係省令が2023年6月1日付で交付、施行されました。この高度化によりチャンネル数の増加や中継利用等が可能となるため、さらにデジタル簡易無線機を快適にご利用いただけますので、こちらの記事をご確認ください。
https://www.jenix.co.jp/special/evo/
IP無線機
IP無線機は音声をパケットデータに変換し、携帯電話のデータ回線を使って送受信を行うサービスが利用できる機器です。IPとはインターネットプロトコルの略称で、専用の周波数の代わりにインターネット通信を使用しています。
携帯電話よりもシンプルに複数の相手と通信でき、IPトランシーバーやPoCトランシーバー、LTEトランシーバーと呼ばれることもあります。
携帯電話の通信網を利用しているのが大きな特徴で、携帯電話が使えるエリアであれば使えるため日本全国での通信が可能です。IP無線機も特定小電力トランシーバーと同じく免許や登録申請の必要はありません。
特定小電力トランシーバーを他社の機器で使用する際の注意点
特定小電力トランシーバーを他社の機器同士で使用する際、メーカーごとに設定している同じ周波数のチャンネルにあわせなければいけない点に注意が必要です。
無線機で有名なメーカー「アイコム」「ケンウッド」「モトローラ」「スタンダード」「八重洲無線」「アルインコ」などは、いずれもいくつかの種類の特定小電力トランシーバーを販売していますが、使用する周波数はどのメーカーでも変わりません。
しかし、周波数に割り当てられているチャンネルが異なるため、メーカーが異なれば同じチャンネルでも周波数が違い、通信できない可能性があります。
次の項では、メーカーごとに周波数に該当するチャンネルがわかる表を紹介しますので、参考にしてください。
特定小電力トランシーバーのチャンネル互換表
メーカーが異なる場合でも通話は可能ですが、チャンネルをあわせる必要があります。そのためにも、事前にそれぞれのチャンネルの表記と周波数を把握しておかなければなりません。
この項では、5つの特定小電力トランシーバーのチャンネル互換表を以下の4つの項目に分けて紹介します。
・単信11ch
・単信9ch
・中継18ch
・中継9ch
また、6つのメーカーのうちモトローラの無線機「CL40」「CL40L」「CL45」「CL70A」「CL120A」の5機種は「スタンダード FTH/PKシリーズ/八重洲無線」と同じ表示です。
単信11ch
周波数 | ケンウッド | モトローラ | スタンダード SRSシリーズ | 八重洲無線 FTHシリーズ | アイコム | アルインコ |
---|---|---|---|---|---|---|
422.0500 | 01 | 01 | 01 | 01 | 01 | b01 |
422.0625 | 02 | 02 | 02 | 02 | 02 | b02 |
422.0750 | 03 | 03 | 03 | 03 | 03 | b03 |
422.0875 | 04 | 04 | 04 | 04 | 04 | b04 |
422.1000 | 05 | 05 | 05 | 05 | 05 | b05 |
422.1125 | 06 | 06 | 06 | 06 | 06 | b06 |
422.1250 | 07 | 07 | 07 | 07 | 07 | b07 |
422.1375 | 08 | 08 | 08 | 08 | 08 | b08 |
422.1500 | 09 | 09 | 09 | 09 | 09 | b09 |
422.1625 | 10 | 10 | 10 | 10 | 10 | b10 |
422.1750 | 11 | 11 | 11 | 11 | 11 | b11 |
単信9ch
周波数 | ケンウッド | モトローラ | スタンダード SRSシリーズ | 八重洲無線 FTHシリーズ | アイコム | アルインコ |
---|---|---|---|---|---|---|
422.2000 | h1 | 12 | 1 | 1 | 12 | L01 |
422.2125 | h2 | l3 | 2 | 2 | 13 | L02 |
422.2250 | h3 | l4 | 3 | 3 | l4 | L03 |
422.2375 | h4 | l5 | 4 | 4 | l5 | L04 |
422.2500 | h5 | 16 | 5 | 5 | l6 | L05 |
422.2625 | h6 | l7 | 6 | 6 | l7 | L06 |
422.2750 | h7 | l8 | 7 | 7 | l8 | L07 |
422.2875 | h8 | l9 | 8 | 8 | l9 | L08 |
422.3000 | h9 | 20 | 9 | 9 | 20 | L09 |
中継18ch
周波数 | ケンウッド | モトローラ | スタンダード SRSシリーズ | 八重洲無線 FTHシリーズ | アイコム | アルインコ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
440.0250 | 421.5750 | 1 | 21 | 12 | 01 | 01 | b12 |
440.0375 | 421.5875 | 2 | 22 | 13 | 02 | 02 | b13 |
440.0500 | 421.6000 | 3 | 23 | 14 | 03 | 03 | b14 |
440.0625 | 421.6125 | 4 | 24 | 15 | 04 | 04 | b15 |
440.0750 | 421.6250 | 5 | 25 | 16 | 05 | 05 | b16 |
440.0875 | 421.6375 | 6 | 26 | 17 | 06 | 06 | b17 |
440.1000 | 421.6500 | 7 | 27 | 18 | 07 | 07 | b18 |
440.1125 | 421.6625 | 8 | 28 | 19 | 08 | 08 | b19 |
440.1250 | 421.6750 | 9 | 29 | 20 | 09 | 09 | b20 |
440.1375 | 421.6875 | 10 | 30 | 21 | 10 | 10 | b21 |
440.1500 | 421.7000 | 11 | 31 | 22 | 11 | 11 | b22 |
440.1625 | 421.7125 | 12 | 32 | 23 | 12 | 12 | b23 |
440.1750 | 421.7250 | 13 | 33 | 24 | 13 | 13 | b24 |
440.1875 | 421.7375 | 14 | 34 | 25 | 14 | 14 | b25 |
440.2000 | 421.7500 | 15 | 35 | 26 | 15 | 15 | b26 |
440.2125 | 421.7625 | 16 | 36 | 27 | 16 | 16 | b27 |
440.2250 | 421.7750s | 17 | 37 | 28 | 17 | 17 | b28 |
440.2375 | 421.7875 | 18 | 38 | 29 | 18 | 18 | b29 |
中継9ch
周波数 | ケンウッド | モトローラ | スタンダード SRSシリーズ | 八重洲無線 FTHシリーズ | アイコム | アルインコ | |
---|---|---|---|---|---|---|---|
440.0250 | 421.5750 | h1 | 39 | 10 | 1 | 19 | L10 |
440.0375 | 421.5875 | h2 | 40 | 11 | 2 | 20 | L11 |
440.0500 | 421.6000 | h3 | 41 | 12 | 3 | 21 | Lb12 |
440.0625 | 421.6125 | h4 | 42 | 13 | 4 | 22 | L12 |
440.0750 | 421.6250 | h5 | 43 | 14 | 5 | 23 | L14 |
440.0875 | 421.6375 | h6 | 44 | 15 | 6 | 24 | L15 |
440.1000 | 421.6500 | h7 | 45 | 16 | 7 | 25 | L16 |
440.1125 | 421.6625 | h8 | 46 | 17 | 8 | 26 | L17 |
440.1250 | 421.6750 | h9 | 47 | 18 | 9 | 27 | L18 |
特定小電力トランシーバーの選び方
この項では、実際に特定小電力トランシーバーを選ぶ際に確認すべき4つのポイントを解説します。参考にして目的にあった特定小電力トランシーバーを見つけてください。
選び方1:利用場面
特定小電力トランシーバーは小型で軽量ですが、デザイン面での違いが大きいため、利用場面によって機種ごとの使い勝手が大きく異なります。
移動が多い環境では、よりコンパクトなサイズや持ちやすさと装着しやすさを求める方向けの機種が適しています。水気や粉塵での故障が心配なシーンでは、防水や防塵性能の高い機種がおすすめです。
抗菌や抗ウイルス加工が施されている機種や、カラーバリエーションが豊富で環境に馴染みやすいデザインの機種もあります。
また、特定小電力トランシーバーは送信出力が小さいためバッテリーの消費が少なく、稼働時間が長いことも魅力です。ただし、メーカーや機種によっても異なるため、利用目的とあわせて購入前に確認してください。
選び方2:通信距離
特定小電力トランシーバーの通信距離は、100mから500mほどです。通信距離はメーカーや機種によっても異なりますが、使用する環境も大きく影響し、コンクリートの壁や障害物の多い市街地などでは、大幅に制限されてしまう場合もあります。
無線機の効果を最大限に発揮するためにも、通信距離は重要です。利用する環境で、通信ができないといったトラブルを避けるためにも、購入前にデモ機などを使って、満足に通信が可能か確認してください。
選び方3:技適マークの有無
3つ目は、技適マークの有無です。技適マークとは技術基準適合証明のことで、マークのある無線機は、電波法によって定められた技術基準をクリアしていると判断できます。この技適マークが付けられた無線機は、1台ごとに試験と審査が行われたものです。
電波法とは、電波の公平で能率的な利用の確保によって公的利益の拡大を目指すために、1950年に施行された法律です。国は電波の管理を徹底しており、必要な制限を設けて電波の効率的な利用を促しています。
技適マークがない無線機の使用は電波法違反となります。ほかにも、技適マークのある無線機を改造すると技術基準適合証明から外れてしまうため、こうした無線機の使用も電波法違反に抵触します。
海外製の無線機も技適マークがついていれば問題ありませんが、日本の電波法が定めた規格と異なる可能性があります。日本では違反となるケースもあるため、購入前に確認しましょう。
電波法の違反は、故意でなかった場合でも1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられます。ジャパンエニックスでは技適マークのとれた信頼できる製品のみ取り扱っております。また既に使用している無線機の技適がとれているか不安な場合も、いつでもお問い合わせください。
選び方4:チャンネルの互換性
使用する機器のチャンネル同士の互換性の有無も重要です。製品が異なる場合は、チャンネルが同じでも互換性がなく、通信ができないケースもあります。
特定小電力トランシーバーは、免許や登録申請が不要で購入後すぐに使用できるのが大きな魅力です。通信できず買い直しが必要といったことがないよう、購入前に確認してください。
まとめ
特定小電力トランシーバーは免許や登録申請が不要で、多くのシーンに利用できる無線機です。業務の効率化やサービスの品質向上、安全管理といったさまざまな目的で効果を発揮します。
ただし周波数を含め、無線機ごとの違いや注意点への理解が足りないと、思わぬトラブルが起きたり、最悪の場合は電波法に違反したりする可能性もありますので、本記事を参考にして事前に理解を深めてください。
ジャパンエニックスはこれまでに多くの業種、業態へ無線機を納入し、メンテナンスやアフターケアをおこなっております。豊富な知識と経験をもとに、お客様にとって最適な無線機をご提案し、納入後も安全かつ効率的な通信システムのサポートをお約束いたします。
また、レンタル事業でも業界トップの保有台数と品揃えで、さまざまなオペレーションシステムをサポートします。無線機を導入してよりよいサービスを提供したい、無線機のメリットを最大限に活かしたいとお考えであれば、ぜひジャパンエニックスにご相談ください。