航空無線は、空港において航空機とグランドクルーの間での情報伝達に使われる重要な手段のひとつであり、ATIS(Automatic Terminal Information Service)と呼ばれる無線情報放送が航空無線のひとつの形態として使われています。
航空無線には航空機ファンや空港周辺の住民にとって、興味深い情報源としての魅力もあります。この記事では、航空無線について、ATISや航空無線の受信方法など、航空機に関する情報を幅広く紹介しています。
なお、アナログ簡易業務用無線機の識別信号「ATIS」とは異なります。
Automatic Transmitter Identification Systemの略で、直訳すると無線局自動識別装置で、簡易業務用無線局のみに必要な装置です。この装置は無線機内部に書き込まれた無線局の識別番号を電波発射時に送出するもので、この識別番号で無線局の所有者等を確認し無線局の管理を行っているものです。
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ATISとは
ATIS(エイティスまたはアティス)とは、航空管制においてパイロットに提供される、空港の情報や手順に関する自動音声案内システムのことです。ATISは、空港での運用を円滑に進めるために開発されたものであり、多くの国で運用されています。
ATISを聞くことで、気象情報や滑走路の状況など、空港への離着陸に必要な情報が分かるため、航空機事故の防止にも役立つとされています。
放送内容
ATISの放送内容は、空港の気象情報や滑走路の使用状況、手順や注意点などが放送されています。ATISは定型文で構成されており、航空管制の基礎知識や英語力などがあればATISを理解できるため、比較的容易に理解できます。
ATISで放送されている内容は、具体的には次のようなものがあります。
● 滑走路の使用状況空港
使用されている滑走路がどれであるかが放送されます。たとえば、”Runway in use is 22″というように、滑走路番号がアナウンスされます。
● 風向・風速情報
空港周辺の風向・風速情報が放送されます。たとえば、”Wind is 240 degrees at 8 knots”というように、風向と風速がアナウンスされます。
● 気温情報
空港周辺の気温がどの程度かが放送されます。
● 到着・出発手順情報
到着する航空機と出発する航空機の手順に関する情報が放送されます。
魅力
ATISの魅力は、パイロットが聞くような無線を誰でも簡単に聞けることです。ATISが提供する情報は、一般市民でもラジオで聞くことができるため、空港周辺における航空機の運用状況を把握できます。
内容がわかれば誰でもパイロットと同じ気持ちになれることは、航空機ファンや無線マニアにとって大きな魅力でしょう。
ATISが提供されている空港では、ATISの放送内容に従って航空機が運用されるため、空港の運用が円滑に進みます。ATISは航空機事故の防止にも役立つとされており、ATISの提供が義務化されている国もあります。
ATISが提供されていない空港では、パイロットが空港情報を判断する際にヒューマンエラーが発生するおそれがあるため、ATISが重要であることが示唆されています。
周波数さえ合わせればいつでも聴ける
ATISは、自動音声で常に放送され続けているため、周波数さえ合わせればいつでも聴取できます。放送時間は、空港によって24時間放送の場合や、時間が決まっている場合があります。
ATISを提供する周波数は明確に定められており、パイロットは空港周辺に入った際には、ATISの周波数に合わせてラジオを調整します。ATISを提供する周波数は、航空情報サービスなどで確認できます。
一部の航空会社では、ATISの情報を自社のアプリやウェブサイトなどで提供しているため、インターネット上でもATISを聴取することができます。
定型文のため知識があれば理解できる
ATISは定型文で構成されているため、航空管制の基礎知識や英語力などがあれば、誰でもATISを理解できるでしょう。
また、ATISは、航空用語や略語が多用されるため、これらを理解することができればより深くATISを理解できます。放送内容を熟知することで、一般人でも航空機の運用状況を把握することができます。
日本全国空港ATISの周波数一覧
ATISの周波数や時間は、空港によって違いがあります。ATIS放送を行っていない空港では、直接管制官から情報を伝達される場合があります。
以下は、全国の空港のATIS周波数の一覧表です。
空港・飛行場 | 周波数(MHz) | 空港・飛行場 | 周波数(MHz) |
---|---|---|---|
新千歳 | 128.6 | 徳島 | 246.8 |
函館 | 126.6 | 高知 | 126.45 |
三沢 | 128.4 / 315.35 | 松山 | 126.65 |
八戸 | 245.8 | 広島 | 127.25 |
仙台 | 126.45 | 岩国 | 128.4 / 283.0 |
新潟 | 128.45 | 小月 | 245.8 |
成田国際 | 128.25 | 福岡 | 127.2 |
羽田空港 | 128.8 | 大分 | 127.8 |
横田 | 128.4 / 281.0 | 熊本 | 128.8 |
厚木 | 246.8 | 長崎 | 126.85 |
座間 | 126.3 | 宮崎 | 126.8 |
キャンプ富士 | 126.3 | 鹿児島 | 127.05 |
中部国際 | 127.075 | 鹿屋 | 246.8 |
大阪国際 | 128.6 | 嘉手納 | 124.2 / 280.5 |
神戸 | 128.075 | 普天間 | 230.3 |
関西国際 | 127.85 | 那覇 | 127.8 / 293.0 |
高松 | 127.45 | 新石垣 | 128.675 |
自衛隊や軍事基地ではメトロと呼ばれている
自衛隊や軍事基地においては、ATISの代わりに「メトロ(METRO)」と呼ばれる無線情報放送が行われています。メトロという名称は、Meteorologyという気象情報を意味する言葉からきており、軍用機の運用に必要な気象情報を提供するための放送です。
ATISと同様、定型文で構成されており、飛行機の乗組員やグランドクルーに向けて、気象情報や空港運用状況などの情報が提供されます。
ATISはすべての空港で放送されているわけではない
ATISは、空港の交通量や空港運用状況に応じて使用する必要性があるため、すべての空港で放送されているわけではありません。主に国内の大型空港や主要な地方空港で使用されており、交通量の少ない小さな空港では、ATISを使用しない場合があります。
たとえば、日本の国内においても、ATISが導入されている空港とそうでない空港があります。大阪国際空港や羽田空港など、国内の主要な空港や地方空港ではATISが導入されています。いっぽうで、地方空港や小規模な空港ではATISが導入されていない場合があります。
また、海外の一部の空港においては、ATISに代わる無線情報放送が行われている場合があります。
空港の航空無線のセクション
空港の航空無線は、CLR、GND、TWR、DEP、APPの5つのセクションで構成されています。それぞれのセクションは、航空機の安全な運航に必要な情報を提供し、地上での誘導や、空中での飛行指示を行っています。
パイロットは、それぞれのセクションに対して、自分の飛行計画や現在位置、飛行経路などの情報を伝えることで、出発許可や飛行指示を取得できます。以下では、空港の航空無線の主要なセクションについて説明します。
CLR
CLRは、クリアランスデリバリーの略称で、飛行計画を提出したパイロットが、飛行前に出発許可を受けるためにコンタクトする航空無線のセクションです。
パイロットは、CLRに対して自分の機体や出発予定時刻、出発地や目的地、飛行経路などを伝え、出発許可を取得します。
GND
GNDは、グラウンドコントロールの略称で、地上での航空機の誘導を行う航空無線のセクションです。
GNDは、航空機の移動や駐機位置の指示、滑走路や誘導路の案内、またはその他の地上での手順に関する情報を提供します。GNDには、滑走路に接続するタキシーウェイからの着陸機の誘導も含まれます。
TWR
TWRは、タワーコントロールの略称で、空港の管制塔内にある航空無線のセクションです。TWRは、滑走路上や地上での航空機の安全管理を行います。
離陸や着陸、誘導路の使用許可、航空機の移動指示などを提供します。TWRは、空港内の滑走路や誘導路の監視を行い、航空機同士の衝突や地上の危険を回避するための適切な指示を行います。
DEP
DEPは、ディパーチャーの略称で、空港周辺の航空管制区域を管轄する航空無線のセクションです。DEPは、空港周辺の航空管制区域内での航空機の安全管理を行います。
離陸直後から、到達地点に到達するまでのフライトの監視を担当し、航空機に対して飛行ルートの指示や高度の調整、飛行進路の変更などを提供します。
APP
APPは、アプローチコントロールの略称で、空港周辺の空域を管轄する航空無線のセクションです。APPは、着陸直前から到達地点に到達するまでの航空機の安全管理を行います。
到着する航空機の監視を担当し、航空機に対して着陸許可や降下率、飛行速度などの指示を提供します。また、着陸直前には、気象情報や着陸条件などの情報を提供することもあります。
航空無線を受信する方法
航空無線を受信することにより、自宅や外出先などから航空機の運航状況や交信内容をリアルタイムで聞くことができます。
航空機ファンや空港周辺の住民などにとって、航空無線の受信は興味深いものです。ここでは、航空無線を受信する方法について説明します。
広帯域受信機を購入する
航空無線を受信する方法のひとつに、広帯域受信機を購入する方法があります。広帯域受信機とは、多くの周波数帯域をカバーする受信機であり、航空無線のほかにも、アマチュア無線や防災無線、市民ラジオなどの受信も可能です。
広帯域受信機を使う場合は、航空無線専用のアンテナを用意することで、より良好な受信が可能になります。
アマチュア無線機を購入する
航空無線を受信する方法のもうひとつに、アマチュア無線機を購入する方法があります。アマチュア無線機は、航空無線だけでなく、アマチュア無線の通信も可能であり、広帯域受信機と同様に、アンテナの設置が必要です。
アマチュア無線機は、入門用の安価なものから、プロが使う高性能なものまで、さまざまな種類があります。
アマチュア無線機についての詳細はこちら⇒https://www.jenix.co.jp/column/006/
まとめ
本記事では、ATISと呼ばれる、空港において航空機とグランドクルーの間での情報伝達に使われる航空無線について解説しました。ATISは、空港の運用状況や気象情報などを定型文で放送することで、航空機の運航に必要な情報を提供しています。
航空無線を受信する方法には、広帯域受信機やアマチュア無線機を使う方法があることもご説明しました。航空無線を受信することで、航空機の運航状況や交信内容をリアルタイムで聞くことができます。
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