トランシーバーは、電話のように離れた相手と会話をするために利用するツールです。業務用に使われる機会が多く、電波があればどこでも使える利便性や複数人に簡単に連絡を取れる手軽さはトランシーバーの強みといえます。
しかし、トランシーバーと周波数の関係性やその調整についてしっかりと理解していないと、知らず知らずのうちに違法な活動をしてしまう場合があります。
そこで、今回はトランシーバーの周波数の仕組みやその合わせ方、周波数帯について解説していきます。
何かご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
周波数とチャンネルは同じ意味か
トランシーバーや無線機の調整を行うとき「周波数」と「チャンネル」というワードを混同して使われている状態を目にしたことがありませんか。
「周波数」と「チャンネル」は、実はまったく同じ意味合いで使われています。というのも、チャンネルとは周波数を割り当てたもの、チャンネルの変更は周波数を変えるという意味を持つからです。
「80.0MHzは1チャンネルで、1300kHzは2チャンネル」という具合で割り当てがされており、JJY周波数をチャンネルに紐付けていくと利用者が簡単に周波数を変更できるようになります。
トランシーバーの周波数の仕組み
トランシーバーでは周波数を利用して音声の送受信を行なっています。周波数ごとに異なる音声が乗せられているため、受信者側は聞きたい音声が乗っている周波数を受信できるようにチャンネルを変更します。
トランシーバーでは主に400MHz帯にあたる帯域の周波数が紐付けられており、この帯域はFMラジオで使用されるものよりもずっと高くなっています。
チャンネル数は9ch、11ch、35chといった具合で種類ごとに提供されており、チャンネル数が11chの場合は0.0125MHzごとに周波数を区切ったものをチャンネルに紐付けています。
また、周波数によって電波の性質に変化が見られます。とくに、近・中距離向けの周波数は電波の音質が比較的よくノイズ耐性にも強いです。
そのため、遠距離での利用があまりないトランシーバーの場合は、近場での利用を想定した周波数が利用されます。
トランシーバーの周波数帯
トランシーバーの周波数帯は種類によって異なります。そこでこのトピックでは、種類ごとの周波数帯について解説していきます。
特定小電力トランシーバー
特定小電力トランシーバーは、出力が小さくかつ通話距離が短い無線機です。周波数帯としては420MHzから440MHz帯となっており、送信出力は最低で0.01ワットとなっています。
特定小電力トランシーバーは、出力が小さいため使用の際に免許や登録が不要です。一般的な無線機では使用の際に免許や登録が必要である点を考えると、特定小電力トランシーバーは利便性に優れた機器だといえます。
そのため、キャンプなどのレジャーや店内での従業員同士のやり取りといった、至近距離での使用に向いています。
簡易業務用無線機
簡易業務用無線機は、その名のとおり簡易的な業務を遂行する際に利用する無線機です。周波数帯としては、150MHzから470MHzあたりを推移します。
このトランシーバーは利用の際に免許や登録が一般的には必要となりますが、レンタルして使用する場合はこうした手続きが不要であるため、特定小電力トランシーバーと同様に利便性に優れています。
しかし簡易無線のデジタル化に伴い、350MHz帯と400MHz帯のアナログ無線機は、2024年12月1日以降は利用できなくなるため、利用の際はこの点に留意しておきましょう。
IP無線機
IP無線機は携帯電話会社の通信網を利用して長距離通信を行う無線機です。そのため、周波数帯は3Gや4Gといった携帯電話のデータ通信網に準拠します。
無線機同士が携帯電話会社の通信エリア内にあればどこでも通信可能であるため、遠距離での使用が期待できます。
また、通話ボタンを押すだけで通話が可能な点や複数機でのグループ通話が可能である点から、利便性の高さもうかがえます。
トランシーバーとアマチュア無線の周波数の違い
アマチュア無線とトランシーバーの周波数の違いは、周波数の対応範囲の広さにあります。一般的にトランシーバーでは400MHzが対応帯域とされるのに対して、アマチュア無線ではHF帯やVHF帯、UHF帯などさまざまな種類の周波数が利用されます。
このように対応周波数帯が異なるため、その利用範囲にも違いが見られてきます。たとえば、アマチュア無線は長い距離での通信が可能で、その距離は数百kmにまで及びます。
それに対してトランシーバーは近距離での利用がメインとなっており、通信距離としても5kmから10kmが目安となっています。そのため、トランシーバーでさらに長い通信距離が必要となる場合はIP無線の利用が必要となってきます。
また、利用の際の資格の有無についても違いがあります。トランシーバーは近距離での簡易的な利用が想定されているため、利用の際に資格の取得が要件になることはありません。
しかし、アマチュア無線は広範囲にわたった利用が可能であるため、他の電波を妨害しないような正確な運用が求められます。
この正確な運用を行うために必要な知識のインプットが必要です。そして、その知識が備わった証として資格取得が求められるのです。
トランシーバーの周波数の合わせ方
トランシーバーの周波数は、チャンネル変更のつまみいじりやチャンネルボタンによる調整で行われます。
トランシーバーではチャンネルに周波数が紐付けられており慎重に任意の周波数を探す必要はなく、通信相手とのチャンネルを合わせるだけでよいため簡単に調整が可能です。
また、チャンネルを合わせても音声が通じないといったトラブルが散見されますが、この場合はトランシーバー間で割り当てチャンネルが異なっている場合があるため、チャンネルを変えて調整してみましょう。
トランシーバーの周波数と違法性について
電波の周波数とその用途は電波法によって規定されています。トランシーバーに関しても電波法でその周波数と用途が定められています。
そして、この規定を破ると法律違反となり、場合によっては処罰の対象となりかねません。そこで、このトピックではトランシーバーの周波数と違法性について解説します。
国ごとに電波の周波数と用途が決められている
電波の周波数と用途は国ごとに規定されています。周波数と用途をしっかりと紐付けることで混信を未然に防いでいるのです。
もしこの紐付けがなされていなかったら、トランシーバーからラジオの音声が聞こえてきたり、業務で使うトランシーバーから警察や消防の通信音声が聞こえてきたりするといったトラブルが続出するでしょう。
また、この周波数と用途の紐付けは国によって異なるため、海外と日本ではトランシーバーの周波数として使える電波は異なってきます。
この点に気づかずに日本で海外製のトランシーバーを使ってしまうと、意図せずに電波法を違反してしまいかねないため、海外製のものを扱う際は慎重な利用を心がけましょう。
トランシーバーの改造も違法に該当する
トランシーバーの改造も違反に該当します。改造に対する規制は非常に厳しく、アンテナの長さを変えただけでも違反となってしまいます。
改造を行ってトランシーバーの出力を高めると、規定外の周波数を利用につながり混信を誘発しかねません。
そのため厳重な規制がされており、もし違反すれば罰金100万円の処罰を科されるおそれもあります。トランシーバーの通信距離を長くして利便性を高めたいと思っても、改造の実施は絶対に避けましょう。
また、遠距離での通信が行いたい方はIP無線機を利用しましょう。携帯電話会社の通信範囲であればどこからでも通信が可能なため、遠距離で通信を行いたい方にはおすすめのツールだといえます。
国内で使用可能かどうかは技適マークで判断する
国内で使用可能なトランシーバーかどうかを判断する際には技適マークの有無を確認しましょう。電波法上、技適マークはあらゆる電波発信機器に付けることが定められています。
そのため、技適マークが付いていれば、国から使用が認められた機器と判断ができます。
また、ネットオークションやフリマサイトなどでトランシーバーを購入する際は注意が必要です。というのも、実機を直接見ながら購入できるわけではないため、技適マークの有無の確認が難しくなるためです。
もし、ネットオークションやフリマサイトでの購入を検討する場合は、必ず出品者に技適マークの有無を問い合わせしましょう。
また、ネットオークションやフリマサイトでは、故障したときの修理やメンテナンスには対応していないことがほとんどです。ジャパンエニックスでは「無線機が動かない」「音が出ない」などのトラブルにも、専門の知識と経験をもった技術部員がサポートするため安心してご購入いただけます。
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トランシーバーの使用は基本的に免許が必要となる
トランシーバーの使用には基本的に免許が必要となります。免許が取得された無線局のみの使用を許可して、混信のリスク低減を図っているのです。
また、総合通信局は無免許の無線局の使用を厳しく取り締まっており、もし無免許での利用が発覚すれば逮捕される可能性もあります。
実際に検挙者も多数出ているため、他人事だと思わずに利用の際はしっかりと免許を取得しましょう。
出力の大きい無線機が規制されている理由
無線機は送信出力が大きくなるとより遠距離の通信が可能となります。そのため、一見出力をとことん上げた方がよいようにも思えますが、実はこれは間違いなのです。
というのも、出力を上げすぎた状態で遠距離での送受信を行うと、その距離の間で同じチャンネルを使っている人たちが情報交換できなくなってしまうからです。
情報を送信している間はチャンネルを独占してしまうため、通信圏内がかぶっていると混信してまって送受信がきちんと行えなくなってしまうのです。
こうした事態を放置すると、全国各地でトランシーバーのトラブルが頻発してしまうため、事前に出力の大きい無線機を規制して未然に問題を防いでいるのです。
したがって、一定以上の送信出力を持つ無線機の使用には免許状や登録状が必要となってきます。
まとめ
トランシーバーは便利な無線機です。業務用として広く利用されており、多くの方の生活や仕事を支えているツールといっても差し支えないです。
しかし周波数に対する理解が甘いと、適切に運用できなかったり電波法に違反してしまったりと多くのトラブルに見舞われます。そのため、トランシーバーと周波数の仕組みをしっかりと理解した上での利用が大切です。
また、技適マークのないものや改造が行われたものの利用は電波法違反にあたり、場合によっては処罰の対象となります。取締まりは厳しく謙虚者も多数出ているため、他人事だと思わずにしっかりとルールを守って使用しましょう。