特定小電力トランシーバーは少ない電力で通信が行えるツールです。コンパクトな大きさで持ち運びに適しており、使用の際に免許や登録が不要なため、利便性は高いでしょう。
しかし、出力が弱いため通信距離が短く、プライベートの趣味や小さい店舗内での従業員のやり取りなど、利用用途が限られてしまう点がネックです。
また、具体的な通信距離を把握していないと急に機能しなくなるといったトラブルにも遭遇しやすくなるでしょう。
そこで今回は、特定小電力トランシーバーの通信距離についてさまざまな角度から解説していきます。
何かご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
無線機のタイプ別に異なる通信距離
無線機のタイプによって通信距離は大きく異なってきます。そこで、このトピックではタイプ別に無線機の通信距離について解説していきます。
特定小電力トランシーバーの通信距離
特定小電力トランシーバーの通信距離は200m程度といわれています。一般的なトランシーバーの通信距離が5~10kmほどである点を踏まえると、非常に短い範囲でのみ機能するツールといえます。
また、通信距離が500m~1kmにまで対応できる機種もあるそうですが、それでも一般機種に比べると大きく遅れを取ります。その他にもさらに通信距離を伸ばしていく手段も用意されていますが、通信距離の面ではあまり期待はできないでしょう。
しかし、コストが安い点や通信の質が高い点、免許や登録が不要である点など他の無線機に比べて優れている部分もあるため、通信距離が短い場所では特定小電力トランシーバーの利用がおすすめだといえます。
簡易業務用無線機の通信距離
簡易業務用無線機の通信距離は5km~10kmほどとなっています。一般的な通信距離を確保しており、アーティストのライブや展示会のイベントなどで広く利用されています。
また、無線機が直接電波を送受信し合う点が特徴となっており、災害などの公共電波が通じなくなる状況でもしっかりと利用できます。
しかし、出力が大きいぶん電気使用量が多い点やそれにともなってバッテリーが重くなっている点がデメリットです。
その他にも、利用のための免許取得や毎年納付しなければならない電波使用料の発生など、手間がかかる点もネックとなります。
そのため、災害時などの電波が通じないときに利用したい無線機といえるでしょう。
IP無線機の通信距離
IP無線機の通信距離は非常に長く、携帯電話の通信圏内であればどこでも利用できます。この通信距離は、IP無線機が携帯電話の通信網を利用することで実現しており、長距離での利用や運送業での利用を検討している方におすすめです。
また、特定小電力トランシーバーと同様に、利用の際に免許や登録を行う必要がないため気軽に利用できます。
しかし、毎月費用が発生するためコストがかかる点や、人が多い場所や遮蔽物がある場所では通信が困難になるというデメリットがあります。
そのため、遠距離でも使える点に魅力を感じる場合はおすすめできますが、近距離で利用したい場合は特定小電力トランシーバーを利用した方がお得だといえます。
通信距離が短い特定小電力トランシーバーだからこその利点
特定小電力トランシーバーは通信距離が短い難点がありますが、それ以外の部分では多くの利点を持っています。
そこでこのトピックでは、特定小電力トランシーバーを使う利点について解説していきます。
コストを抑えて使用できる
1つ目の利点は、コストを抑えて使用できる点です。そもそもの機器自体が安いことに加えて、通話料が無料でバッテリーの消費量も少ないため、ほとんどコストがかかりません。
また、単3電池1本で20時間以上の利用が見込めるため、電池が切れたとしてもすぐに取り替えが可能です。こうしたメンテナンスの手軽さも魅力といえるでしょう。
コストパフォーマンスの点では他のタイプと比べても群を抜いて優れているため、近距離で無線機を利用する際は特定小電力トランシーバーを選ぶとよいです。
ほとんどタイムラグなしで送受信できる
2つ目の利点は、ほとんどタイムラグなしで送受信できる点です。一般的なトランシーバーでは発信と受信の間にタイムラグが発生します。
使い物にならないほどにタイムラグが発生するわけではないですが、若干のずれを感じるため会話の際にわずらわしさを感じやすいです。
それに対して、特定小電力トランシーバーはこの時間差がほとんどありません。通信距離は短いですが通信の質は高く、テンポよくやり取りができます。
したがって、近距離で頻繁にやり取りを行う場合は特定小電力トランシーバーの利用がおすすめです。
長時間にわたって使用し続けられる
3つ目の利点は、長時間にわたって使用し続けられる点です。特定小電力トランシーバーは出力が小さいぶん電力の消費も少ないため、長時間の利用に耐えられます。
それに対して、一般的なトランシーバーは出力の強さが原因で電気消費量が激しく、長時間の利用が難しいです。
そのため、1日がかりで行われるイベントやプライベートのキャンプなどのレジャーの際に便利に使える無線機だといえます。
長時間にわたる無線機の使用を近距離で実施することを検討している方は、ぜひ特定小電力トランシーバーを利用してみてください。
容易に持ち運べる
4つ目の利点は、容易に持ち運びが可能な点です。出力が小さいためバッテリーなどの部品も大きくする必要がなく、コンパクトな仕様が実現できています。
一般的なトランシーバーは、出力の大きさに対応するために機器を大型なものにする必要があります。それに対して、特定小電力トランシーバーは単3電池1本で対応できる出力となっているため、小型の機器で対応できます。
このように小型で持ち運びが容易であるため、移動しながら利用するときや外で利用するときに使いたいトランシーバーだといえるでしょう。
特定小電力トランシーバーの通信距離を伸ばす方法
特定小電力トランシーバーの問題点は通信距離が長くない点ですが、対処法があります。
そこでこのトピックでは、特定小電力トランシーバーの通信距離を伸ばす方法について解説していきます。
アンテナが長い機種を利用する
1つ目は、アンテナが長い機種の利用になります。無線機器はアンテナが地面から離れるほど精度が上がり、それにともなって通信距離が伸びます。
地面から離れると精度が上がるのは、地面の土壌や植物が電波を吸収しにくくなるためです。土壌や植物といった水分が多い物質は電波を吸収する性質を持ち、地面から近い距離でトランシーバーを利用すると無線機器としての精度が落ちます。
そのため、アンテナを長くするといった対応を取り、地面からの距離を極力遠くして電波が吸収されにくいようにすると利用の幅が広がります。
したがって、特定小電力トランシーバーを購入する際はアンテナの長さに着目するとよいでしょう。
アンテナを高い位置に設置する
2つ目は、アンテナを高い位置に設置する方法です。アンテナを長くしてもまだ通信距離が足りないというときは、思い切ってアンテナを高い所に設置すると状況が改善する可能性があります。
高い位置に設置する際は周りに遮蔽物がないかどうかも確認しましょう。遮蔽物があると電波が真っすぐに進めない、電波自体が吸収されてしまうなどの問題が発生する場合があり、通信距離が伸びません。
ただ高い位置に設置するのではなく、遮蔽物が見当たらないレベルの高さにアンテナを設置することを意識すると、劇的に通信距離が伸びるようになるでしょう。
近くに金属製品を置かないようにする
3つ目は、近くに金属製品を置かないようにする方法です。金属には電波を反射する性質があります。そのため、トランシーバーの近くに金属製品があると電波が反射されてしまい、思うように通信ができないというトラブルが発生しやすいです。
実際に、建物の鉄筋コンクリートや冷蔵庫といった家電が電波に影響を与えて、通信障害を引き起こしている例は少なくありません。
したがって、もし特定小電力トランシーバーの通信距離があまりにも短いと感じた場合は周りに金属製品がないかどうかを確かめてみてください。
もし、そこで金属製品が見つかれば、場所を移してみましょう。するとトランシーバーの通信の質が一気に改善されるかもしれません。
屋外に出て通信を行う
4つ目の方法は、屋外に出て通信を行うことです。屋内には金属物や遮蔽物、別室で発生している周波数の発信など、多くの障害物が潜んでおりそれらがトランシーバーの通信を妨げます。
特定小電力トランシーバーのもともとの通信品質は高いですが、屋内で利用すれば少なからず周りの影響は受けるため、それが原因で通信距離にも悪影響が出ます。
そのため、特定小電力トランシーバーの通信距離を最大限活用したい場合は屋外に出て通信を行いましょう。
そして、もし可能であれば周りに建物などがない場所で通信を行いましょう。建物がそこら中にある場所で通信を行うと電波が妨げられるおそれがあるため、通信距離が思ったほど伸びない場合があります。
したがって、周りに何もない場所で利用するのが最もおすすめな利用方法となります。
中継器を設置する
ここまでいくつかの対象法を紹介しましたが、これらでも不充分だと感じた場合は中継器の設置を検討しましょう。
中継機は電波の中継を行うツールで、通信距離を2倍にまで伸ばせるといわれています。もし、中継機を使えば1km以上離れた相手との通信も可能となります。
そのため、通信距離の問題を確実に改善したい方は中継器の設置を行いましょう。また、注意点になりますが、特定小電力トランシーバーは中継器対応ができないものもあるため、購入の際はその点に留意して選びましょう。
まとめ
特定小電力トランシーバーは、近距離での通信業務に特化した通信機です。通信距離は短いですが、通信品質の高さや持ち運びの手軽さなどよい点も多く見られます。そのため、近距離で通信機を使う際はおすすめのツールといえます。
また、ネックとなる通信距離に関しても中継器の設置などの工夫を行えばある程度の改善が見込めます。長距離での通信はさすがに行えませんが、1km程度の中距離までは工夫次第で対応可能となります。
したがって、特定小電力トランシーバーを使って離れた距離での通信を行いたい方はこの記事で紹介した対策をぜひ実施してみてください。