無線機にはさまざまな種類があります。最近ではデジタル無線機というツールも登場してきており、日々進化している様子がうかがえます。
無線機は2種類に分類され、それぞれで用途が異なってきます。違いを理解していると状況に応じた無線機の使い分けができますが、正しく理解している方は多くないでしょう。
そこでこの記事では、その2種類にあたる登録局と免許局の具体的な違いを9つに分けて紹介していきます。
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登録局とは
登録局は平成20年に制度化された新しい仕組みで、このジャンルに属する無線機は業務以外のさまざまな用途で利用されています。
利用の際には登録申請と開設届けの提出が求められますが、免許は不要であるため気軽に利用できます。
また、無線機が登録されていれば登録を申請した本人以外の利用も認められているため、レンタル無線機としての貸出などにも対応可能です。
そのため、個人利用としての使用がどんどん増えてきており、最近ではレジャー目的での無線機の使用が目立っています。
しかしその一方でネックとなる点もあります。1つ挙げられるのがチャンネル数の少なさです。チャンネル数が少ないため周波数がかぶりやすく、混線に悩まされるといわれています。
そのため、無線機でしっかりと連絡を取る必要がある業務用として利用するのは難しいでしょう。しかし、個人利用においては気軽に使えるという利点の大きさがこの欠点を上回るため、今後も登録局の利用は普及していくといえます。
免許局とは
免許局とは、会社や機関などの団体が利用することを目的とした無線局です。
この無線局の使用には免許の申請が必要となっており、無線機の申請をするたびに申請が求められます。
また、団体での業務利用が目的であるため、団体以外の人の免許局の利用や貸し出しは認められていません。もし、団体にまったく関係のない人にレンタルをしてしまうと、違法となるため注意しましょう。
このように、免許の申請が必要である点や限られた人しか使えない点を見ると使い勝手が悪い印象を受けますが、免許局自体の機能性は非常に優れています。
たとえば、免許局は保有するチャンネルがバラエティに富んでいます。さまざまな周波数に対応できるため混線のリスクが低く、混み合っている場所や電波が飛び交う場所でも快適に利用できます。
業務遂行において通信の質の高さは重要なポイントとなるため、団体での業務利用を行う上では使い勝手がよいといえるでしょう。
登録局と免許局の具体的な違い
登録局と免許局にはさまざまな面で相違点が見られます。そこで、このトピックではそれぞれの具体的な違いを9つ紹介します。
免許の有無
1つ目の違いは免許の有無です。まず、登録局の利用の際には免許取得が求められません。
免許が不要なことから気軽に利用でき、幅広い層から利用されています。実際に、レジャーなど娯楽目的の個人利用が増えています。
その一方で、免許局では免許の取得が求められます。免許局は利用の際に手間がかかりますが、機能は抜群に優れているため免許取得後はストレスなく使用できます。そのため、業務を行う際に利用すると便利です。
周波数
周波数にも差があります。とくに登録局に関しては利用できる周波数の数に限りがあります。
免許局はアナログとデジタルの両方の周波数に対応しており、UHF/アナログ465MHz帯やVHF/デジタル154MHz帯などさまざまな周波数にアクセスできます。
その一方で登録局は対応している周波数に限りがあり、基本的に利用できるのは351MHz帯の周波数になります。
対応できる周波数に限りがある点はネックですが、その部分を補うほどの手軽さが魅力であるため、状況によって無線機を使い分けて柔軟に対応する必要があります。
チャンネル数
周波数と同様にチャンネルの数も免許局の方が多いです。ちなみに周波数とチャンネルは同じ概念であるため、それぞれの数は比例します。
また、具体的なチャンネルを見ていくと、免許局では19ch+9pchや65chの利用が可能であるのに対して、登録局のチャンネルは30chと5chのみに限られます。
チャンネル数は多い方が混線のリスクが減るため、安定的な運用を行いたい場合は免許局の利用がおすすめです。
使用可能区画
使用可能区画に大きな差はなく、基本的にどちらも全国の陸上および日本周辺海域での利用が可能です。
1つ違いを挙げるとすれば、登録局は全国の陸上と日本周辺海域の上空での使用にも対応ができている点になります。
免許局はこの範囲での使用ができないため、この部分においては登録局が免許局に対して頭ひとつ抜き出ているといえます。
また、周波数によっても使用可能区画がわかれています。登録局は一部の周波数では上空での利用ができず、免許局は一部の周波数に関しては日本周辺海域での利用ができません。
通信方式
通信方式にはデジタル通信とアナログ通信の2つがあります。免許局では2種類とも対応していますが、登録局ではデジタル通信のみ対応可能です。
デジタル通信は音質がクリアで通信トラブルが発生しにくいという利点があるのに対して、アナログ通信は通信のタイムラグが短いという利点があります。
そのため、状況によって好まれる通信方式が異なり、舞台運営などの時間管理が厳しい業界ではアナログ通信が好まれています。
しかし、2024年12月からアナログ通信は利用できなくなるため、今後はデジタル通信への適応化が求められてきます。
使用用途
使用用途としては免許局が業務使用のみに限定されるのに対して、登録局は業務以外の幅広い用途での使用が認められています。
前提として、免許局は団体での使用を前提としていることもあり、使用者に制限がかかります。そのため、利便性の面ではあまり優れていないといえます。
一方で登録局に関しては幅広い用途での利用が推進されているため、多くの人に利用されています。業務のための使用はもちろん、キャンプなどのレジャーでも使用されているため手軽さの面で優れています。
レンタル可否
免許局はレンタルができないのに対して、登録局は問題なく許可されています。このような違いの背景には、それぞれの使用用途が関係しています。
免許局は団体での利用が前提のため、団体に関係ない人の利用が禁止されています。この原則に基づくと、関係がない第3者への貸し出しを想定するレンタルも同様に禁止とされるのです。
一方で、登録局に関してはこのような規制はありません。機器の登録さえ行っていれば登録者以外による利用も認められているため、レンタルに何ら問題がないのです。
キャリアセンス
キャリアセンスとは混信を未然に防ぐために、同じ周波数帯の電波を受信している間は送信が禁止される機能です。この機能はチャンネル数が多い免許局には搭載されていません。
登録局はチャンネル数と対応している周波数帯が少ないため、こうした処置を取らないと混信のトラブルが多発してしまいます。逆に免許局はチャンネル数が多数あり、通信トラブルに見舞わられるリスクが低いため、キャリアセンスの搭載が不要なのです。
不特定多数との通信
登録局は不特定多数との通信に制限がないのに対し、免許局に関しては免許人が所属している団体に限られます。免許局の利用を広く認めてしまうと「団体による利用」という前提が崩れてしまうからです。
それに対して、登録局はそもそもの成り立ちからして通信に関する制限がないため、不特定多数との通信が自由に行えます。
登録局と免許局どちらを選ぶべきか
この2種類の無線機のよさは状況によって発揮される度合いが異なってきます。
そこでこのトピックでは、登録局と免許局のそれぞれの利用に適したケースについて解説します。
登録局がよいケース
個人利用を積極的に行いたい場合には、登録局が適しています。免許が不要で気軽に利用できる点や、不特定多数にも通信できるためです。
レジャーなどライトな目的で無線機を使うときは、気軽さや便利さが重視されるでしょう。また、レンタル業を行いたいときにもおすすめです。
その他にも個人名義での登録が可能であったり、不足時に追加レンタルができたりと柔軟な対応ができる点も登録局の魅力です。そのためイレギュラーな事態に備えるという意味でも登録局の利用がおすすめといえます。
しかしその一方で、キャリアセンスを搭載しているため、通信自体の利便性には欠けています。もし通信自体の質にもこだわりたい場合には、一度立ち止まって免許局との比較を行ってみるとよいでしょう。
免許局がよいケース
免許局がよいケースは、団体内での利用を想定している場合になります。免許の取得が求められる点や不特定多数への通信に制限がある点など不便さを感じる部分はありますが、通信機の性能自体は格段に優れています。
免許局はチャンネル数の多さや通信品質の高さなど、業務で使う上で抑えておきたい品質面でのポイントをしっかりと捉えており、安心して利用できます。また、キャリアセンスを搭載していないため、通信が遅れる心配もありません。
しかしその一方で、不足時に追加レンタルが受けられない点や、申請や免許更新の際に印紙代が必要となる点など機能以外の面で利便性に欠けます。
したがって、柔軟な対応を求めている場合には、免許局を本当に利用すべきなのかということをしっかりと考え直す必要があります。
まとめ
登録局と免許局にはそれぞれのよさがあります。無線機に求める内容が異なればおすすめとされるツールも変わってくるため、不満なく無線機を使うためにはこの2種類のデジタル無線機への充分な理解が必要です。
そして、とくに抑えるべきポイントはその使用用途にあるといえます。免許局が団体での利用を想定しているのに対して、登録局は個人による幅広い利用を想定しています。
使用用途の切り口からそれぞれのよさを比較していくと、どちらの無線機を使うべきかが自然と見えてくるでしょう。
この記事でご紹介したそれぞれの特徴を把握して、使うべき無線機についてじっくりと考えてみてはいかがでしょうか。