自宅に設置した無線機でさまざまな人と交流するアマチュア無線。国内の有資格者は340万人程度といわれており、インターネットやスマホが普及した現代でも「趣味の王様」として親しまれています。
そのなか、「もうすぐ今のアマチュア無線機が使えなくなる」や「デジタル化」という情報をよく聞くことがあります。現在アマチュア無線を楽しんでいる人たちも、今後必要な対応を怠ってしまうと、現在使っているアマチュア無線機が使えなくなるかもしれないなど不安がでますが、
答えとして、「アマチュア無線のデジタル化(アナログ廃止)」はありません。
アマチュア無線は国際規格、趣味的位置づけではありますが、航空無線や船舶無線と同じく国際条約で規格化(外国の無線局と通信するため)されています。従って、総務省(日本の電波管理省庁)だけの判断でデジタル化することはできず、国際会議を経て条約加盟国の同意を得て初めて可能になりますが、本記事執筆時点ではそのような条約改正の話はありません。
では、なぜ「もうすぐ今のアマチュア無線機が使えなくなる」や「デジタル化」という情報がでてくるのかというと、同じ無線機であり外見も似ている「簡易業務用無線機」がデジタル化するためだと思われます。
また、もう一つの理由として、旧スプリアスの使用期限が2024年(令和4年)11月30日までとされており、アマチュア無線機もこの旧スプリアス規格を使用しているユーザーは買替する必要がありました。
しかし、新型コロナウイルス感染症による社会経済への影響等による無線設備の製造や移行作業に遅れが生じていることを考慮し、2021年(令和3年)8月に無線設備規則の一部を改正する省令(平成17年総務省令119号)の附則第3条及び第5条の一部を改正し、その使用期限を当分の間、延長することになり、その情報も相まって「もうすぐ今のアマチュア無線機が使えなくなる」や「デジタル化」といった混乱が生じたのかと思われます。
簡易業務用無線機のアナログ無線機からデジタル無線機への移行とあわせて、これからアマチュア無線機を始めようと考えている方への事前に必要な準備や手続きについて解説をします。
無線を取り扱うにあたって必要な知識も含まれているので、ぜひ参考にしていただければと思います。
何かご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
アマチュア無線とは
アマチュア無線とは、通信技術に個人的な興味を持つ者が行う通信のことで、自己訓練や技術的研究を目的にしたもののことです。
あくまで趣味として行われ、金銭的な利益の追求のために行われるのではないのが特徴です。
アマチュア無線の愛好家は国内外に多く、年齢や性別、職業を超えて、多くの人と交流を持てるのが魅力です。
アマチュア無線を始めるには
アマチュア無線は無線を取り扱うため、始めるためには免許が必要です。
免許取得のために必要とされるのは「アマチュア無線従事者」という資格で、第1級〜第4級に等級が分かれています。
どの等級の免許でも、アマチュア無線局のすべての無線機器を操作できますが、扱える周波数や空中線電力のワット数が、等級によって異なっています。
免許を取得するためには、年に数回行われる試験に合格し、アマチュア無線技士の資格を得なければなりません。
アマチュア無線技士の資格を取得することで、アマチュア無線を利用するための「無線従事者免許」の申請ができ、免許を取得することでアマチュア無線の利用が可能になります。
アマチュア無線技士の資格は、国家試験を受験して合格することで取得できるほか、養成課程講習会を受講することでも取得できます。
国家試験を受験する場合は、テキストを購入しての独学での勉強、または資格取得講座を受講して、試験対策を進めるかたちになります。講座の受講については、最近ではオンラインによるものや通信講座も人気です。
養成課程講習会に参加する場合は、参加費を払って約2日間の講習を受講します。講習会を修了することで、国家試験の受験は不要になりますが、講習会の修了試験を合格しなければなりません。
国家試験は合格率が70%程度ですが、養成課程講習会では約97%と非常に高いため、時間のない人やすぐに無線を楽しみたい人は、養成課程講習会で免許取得を目指すのがおすすめです。
アマチュア無線の魅力
アマチュア無線の楽しみ方と聞くと、遠方のアマチュア無線愛好家との交流をイメージする方が多いのではないでしょうか。
たしかにそういった交流もアマチュア無線の楽しみ方のひとつですが、アマチュア無線にはそれに止まらない多くの魅力があります。
アマチュア無線は、同じアマチュア無線との間であれば、誰とでも交信可能です。この交信は1対1に限定されず、誰でも交信している内容を、自身の無線局で聞くことができます。
そのため会話内容に興味を持ったほかのユーザーが反応したり、会話に途中参加したりできるなど、開かれた交流が楽しめます。
また海外のアマチュア無線家とも交信ができるので、外国語に堪能な人は国際交流できるのも楽しみのひとつです。
また技術的な探究を楽しめるのも、アマチュア無線の魅力です。自分で考えた電子回路で、オリジナルのアンテナやトランシーバーを作る人もいれば、より長い交信距離に挑戦する人など、楽しみ方はさまざまです。
このように無線という大きな仕組みや技術のなかで、多彩な楽しみ方を追求できるのがアマチュア無線です。
またアマチュア無線は費用が安いのもメリットのひとつです。
通信自体に料金はかからず、年間の電波の使用料が500円程度かかるほかは、電気代程度の費用で楽しめます。
また携帯電話やインターネットなどと比べて災害に強く、基地局や中継アンテナが不要なことから、緊急通信手段としても利用できます。
アマチュア無線の楽しみ方
アマチュア無線を楽しむ際に守らなければならないのが、法律やマナーです。
アマチュア無線は利用の範囲が電波法によって定められており、業務用や金銭上の利益のために利用することはできません。
またそのほかにも、他人に依頼された通信や暗号の使用、わいせつな通信などが禁じられています。これらに抵触さえしなければ、その範囲で自由に楽しめます。
アマチュア無線は楽しみ方が幅広く、愛好家はさまざまな方法で無線を楽しんでいます。
ほかのアマチュア無線愛好家との交流は、楽しみ方としては非常にオーソドックスなものですが、通信を行う場所を自宅以外にすると、一気に楽しみ方は広がります。
携帯型の無線機を使用してドライブやツーリングをしながら通信する「モービル運用」と呼ばれる楽しみ方や、アウトドアで無線を行う「移動運用」と呼ばれる楽しみ方など、屋外通信はアマチュア無線の楽しみをより拡張してくれるものです。
また前述のように、技術的な探究もアマチュア無線の楽しみ方のひとつです。
無線技術を学ぶことで無線や無線機をより深く知ることができ、機器に詳しくなれば、自作の無線機器を作ることさえ可能です。
テレビの電波や人工衛星の電波を受信することさえ可能で、仕組みがあった場合にそれを使って何ができるかを追求したくなるタイプの人には非常に向いた趣味といえます。
アマチュア無線は2024年12月1日で使えなくなる?
「アマチュア無線のデジタル化(アナログ廃止)」はありません。
アマチュア無線は国際規格、趣味的位置づけではありますが、航空無線や船舶無線と同じく国際条約で規格化(外国の無線局と通信するため)されています。従って、総務省(日本の電波管理省庁)だけの判断でデジタル化することはできず、国際会議を経て条約加盟国の同意を得て初めて可能になりますが、本記事執筆時点ではそのような条約改正の話はありません。
では、なぜ「もうすぐ今のアマチュア無線機が使えなくなる」や「デジタル化」という情報がでてくるのかというと、同じ無線機であり外見も似ている「簡易業務用無線機」がデジタル化するからだと思われます。
これは2024年12月1日までに実施される、400MHz帯と350MHz帯の簡易業務用無線機で、アナログ無線機からデジタル無線機への移行によるものです。
電波法の改正にともない、アナログ方式を用いた400MHz帯と350MHz帯の簡易業務用無線機は、2024年11月30日をもって使用できなくなります。
これは総務省が主導するアナログ無線機からデジタル無線機への移行にともなうもので、前述の2024年11月30日をもって、特定の周波数帯を使用するアナログ無線機の使用が禁止されます。
これはアナログ方式による電波の使用に対して、デジタル方式の電波の方が使用する周波数帯幅が小さく、電波を有効活用できることから推進されてきたものです。
対象のアナログ無線機を使用している場合は、2024年11月30日までに手続きや対応が必要になります。
使えなくなる周波数帯
使用できなくなる周波数帯は以下の2種類です。
• 400MHz帯のアナログ方式の簡易無線(アナログUHF簡易業務用無線)
• 350MHz帯のアナログ方式の簡易無線(小エリア簡易業務用無線・新簡易業務用無線)
移行期限の翌日以降は上記のアナログ無線機は使用できなくなります。
またアナログ無線機だけでなく、上記の機能をそなえたデュアル無線機も、アナログ方式部分のみ対応を行う必要があります。
またスプリアス規格の無線機も、2024年11月30日までに対応が義務付けられています。
スプリアス規格は2005年に新たな基準が設けられており、下記に該当する無線は使用が11月30日までとされています。
• 2007年11月30日以前に製造された無線機(不明なものも含む)
• 旧スプリアス規格の無線機で、新スプリアス規格に適合していない無線機
ただし、新スプリアス規格に適合していることが確認できた場合は、 届出書の提出によって、2022年12月1日以降も継続利用が可能です。
旧スプリアスのアマチュア無線が使用できなくなる
不必要な電波(不要電波)をできる限り低減させることによって、電波利用環境の維持、向上及び電波利用の推進を図るため、WRC(世界無線通信会議)において、無線設備のスプリアス発射の強度の許容値に関する無線通信規則(RR)の改正が行われました。国内においては、無線通信規則(RR)の改正を踏まえ、情報通信審議会における技術的条件の審議及び電波監理審議会における関係省令の改正案の審議を経て、無線設備のスプリアス発射の強度の許容値に係る技術基準等の関係省令及び関係告示が改正され、2005年(平成17年)12月1日から新たな許容値が適用され、旧スプリアス規格(不明なものも含む)の無線設備については、その使用期限を2022年(令和4年)11月30日までとしていました。
しかし、新型コロナウイルス感染症による社会経済への影響等による無線設備の製造や移行作業に遅れが生じていることを考慮し、2021年(令和3年)8月に無線設備規則の一部を改正する省令(平成17年総務省令119号)の附則第3条及び第5条の一部を改正し、その使用期限を当分の間、延長することになりました。
総務省は今後、新型コロナウイルス感染症の収束や社会経済状況等の回復を踏まえつつ、移行期限を総合的に検討するとともに、それまでの間については、早期に新スプリアス規格へ移行が図られるよう各免許人の状況に応じて対応していくこととしております。
なぜ簡易業務用無線機はデジタル化するのか
アナログ無線機に対し、デジタル無線機は通信で占有する周波数帯幅が小さいのが特徴です。
音の振幅をそのまま電波に乗せて発信するアナログ方式と比べて、音声をデジタル化したうえで送信するデジタル方式は、無線の送信方式として非常に効率的です。
電波の使用においては、国内の周波数はすでにさまざまな用途に割り振られています。
今後新たな用途に対する周波数帯幅の割り当てが必要なため、より使用する周波数をより効率的に再編する方法が検討された結果、その方法のひとつとして、無線のアナログ方式からデジタル方式への移行が進められることになりました。
2008年には、総務省による簡易無線のデジタル化の推進がスタートし、長い時間をかけてデジタル無線機の普及が進んできたという背景があります。
デジタル化への移行の最終的な期限としては、2024年11月30日が定められています。
簡易業務用無線機の2024年11月30日までに必要な対処
2024年11月30日までに対象のアナログ無線機に関する所定の手続きが必要です。
また無線機によっては一部改修が必要になります。
アナログ無線機の利用期限にあわせて無線の使用を終了する場合は、管轄の総合通信局への廃止届の提出が必要です。
また、デジタル無線機へ切り替えて利用を継続する場合は変更届の提出が必要です。
アナログ、デジタルの両方の機能を持つデュアル方式の無線機の場合は、アナログ部分の機能改修が必要です。
業者に依頼するなどして、アナログ部分を使えないようする必要があります。
またあわせて免許情報の更新が必要で、移行期限までに、変更申請の届出を行う必要があります。
2024年12月1日以降も簡易業務用無線機のアナログ無線を使っていた場合
2024年12月1日以降にアナログ無線を使って禁止された周波数帯で電波を発射した場合、電波法違反として罰せられます。この場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が課せられます。
なお電波法違反となるのは、禁止された400MHz、350MHzの周波数帯で電波を発した場合のみで、無線機を所持しているだけなら問題はありません。
しかし電波を発射できる機器を持っていることで、何かの間違いで電波を使用してしまう可能性も完全には否定できません。所持しているメリットはないため、早めの処分や対応をおすすめします。
簡易業務用無線機のアナログ無線機の停止や処分における費用
アナログ無線機の停止や処分自体に費用はかかりません。
無線自体の利用を止める場合は、管轄の総合通信局に廃止届を提出するだけです。支払わなければならない費用や手数料はありません。
継続して無線を使用する場合は、デジタル無線への変更申請が必要です。こちらも廃止をする場合と同様に必要とされるのは申請の届出だけで、登録料や変更手数料などの実費はかかりません。
費用がかかる場合があるのが、アナログ方式とデジタル方式の両方の機能をそなえたデュアル無線機を使用している場合です。
デュアル無線機の場合はアナログ方式部分を改修して電波を発射できないようにします。
業者に頼む場合は数千円の費用を見込んでおきましょう。
まとめ
アマチュア無線は、世代や時代を超えて広く親しまれ続けている趣味です。
インターネットの普及などにより、人や情報の繋がり方が大きく変わりましたが、それでも長く楽しまれ続けているのは、趣味としての奥深さといえるでしょう。
アマチュア無線への関わり方や追求のしかたはユーザーごとに異なりますが、公共の電波を使用する趣味である以上、法律やマナーは遵守しなくてはなりません。
また、逼迫する電波の周波数の改善のために、無線のデジタル化が進められてきましたが、簡易業務用無線機のデジタル化への移行期日である2024年11月30日が迫ってきています。
様々な業務の現場で活用される簡易業務用無線機ですが、対象のアナログ無線機は、余裕をもってしっかりと対応を済ませておきましょう。特に直前期は需要も高まり在庫も枯渇しがちです。
今日の半導体不足による電子機器製造への影響、世界的な物流遅延など、商品の供給が不足すると懸念されております。
事前にしっかりとした計画を立て、少しずつ準備をすすめていくのがおすすめです。
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