無線を手軽に、かつ最新の機能性のもとで使いたいなら、IP無線がおすすめです。
IP無線は携帯電話の通信回線を利用することから、従来の無線よりも圧倒的なエリアの広さと通信距離の長さを兼ね備えています。
また従来の電波を使った無線で起こりがちだった他の回線との混信も生じないため、幅広い用途で活用されています。
本記事ではIP無線の性質や使い方などの基礎知識に加えて、IP無線機のメリットや導入事例について詳しく解説していきます。
何かご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
IP無線機の概要
IP無線機とは、携帯電話の回線を利用して通信を行う無線機を指します。
弊社では別名LTE無線機と呼んでいます。
IPとは「インターネット・プロトコル」の略で、データがネットワークを経由して正しく宛先に届くよう定められた、アドレスと接続に関する通信規約のことです。
IP無線機の特徴は、携帯電話の回線を使った広域での通信と混信のない高品質な通信です。
従来の無線機は電波を使って通信を行なっていたため、通信が可能な範囲は電波の届く範囲に限られており、それよりも遠い相手とは通話ができませんでした。しかしIP無線機では携帯電話の通信回線を利用するため、カバーエリア内であればどこでも通話が可能です。
従来の無線で通話できる範囲が1〜2km程度だったのに対し、IP無線機は携帯電話の通信エリア内であれば全国どこでも通信可能であり、無線性能は飛躍的に向上したといえます。
またIP無線機では、障害物による電波障害がなく、他の通信による混線もありません。
通話品質の向上も、IP無線機の特徴といえるでしょう。
また携帯電話の回線を利用するということで、携帯電話と同じではないかと疑問に思う人もいるかもしれません。
携帯電話とIP無線機は、それぞれ使用する通信回線は同じですが、通話のスタイルがやや異なります。
携帯電話は通話する相手との1対1でのやり取りが基本ですが、IP無線機では一度に複数の相手との通話が可能です。
IP無線機では同じ回線に接続する複数の無線機宛に通話を送ることができ、1対多人数でのやり取りができます。
このような特性から、大規模イベントや大型商業施設など、さまざまな場面での活用が期待できます。
IP無線機の性質
ここからはIP無線機の機能や性質について、詳しく解説していきます。
全国どこでも通話可能
IP無線機の最大の特徴は、全国の広い地域で通話が可能ということです。
国内の広大なエリアをカバーする携帯電話の通信回線を利用することから、国内の広大なエリアがほぼすべて通話可能なエリアとなります。
従来の無線機では、通話や電波を使って行なっていました。
そのため、通話のできる範囲も電波の届く範囲内で、1~5km程度の範囲が限界でした。
しかしIP無線機では、携帯電話の回線を使って通話データをやり取りするため、極めて広い範囲を通信可能なエリアにできます。
通信網が発展した現在では、携帯電話で電話をかける場合に、電波が繋がるどうかを気にすることはほとんどなくなりました。
IP無線機も利用する通信網は同じであるため、それとほぼ同じ感覚で利用できます。
また従来の無線機とのもうひとつの違いが、障害物に強いということです。
IP電話では、携帯電話の回線を使って通話をデータで送受信しています。
そのため、通信が他の電波の影響を受けにくく、また他の電波が混信することもありません。
電波はどうしても障害物などの物理的な環境に影響を受けがちです。
従来の無線の電波は、外的な条件によって劣化してしまうことも多々ありましたが、携帯電話の回線は比較的壁や柱にも強く、また地下などの電波の届きにくい場所でも回線が途切れないよう通信品質も維持されています。
同じ「無線機」ですが、IP無線機になったことで、通話の利便性は格段に向上しているといえるでしょう。
免許や登録申請の必要がない
使用のために免許や登録申請の必要がないのも、IP無線機の特徴です。
たとえば従来の無線機のような、1Wの出力を超えるトランシーバーは「簡易業務用無線機」として、取り扱うためには「無線従事者免許」が必要でした。
これは電波法で義務付けられているもので、違反した場合には懲役刑または罰金が課される非常に厳しいものです。
簡易業務用無線機は、タクシーや消防などで業務用として使われており、仮に業務で必要になった場合は、まず無線従事者免許を取る必要がありました。
また無線に免許が必要なのは業務用に限らず、アマチュア無線の場合でも「アマチュア無線技師」の資格が必要です。
しかしこれらに対し、IP無線機の使用には免許は必要ありません。
IP無線機は電波の出力が0.25Wと基準よりも低いため、免許や登録申請なしに無線機を利用できます。
携帯電話を使うのと同じ感覚で、無線機を使用できるのは大きなメリットです。
また、簡易業務用無線機は出力が大きいことから本体サイズも大きく、かなりの重量があります。
またバッテリー消費も大きいことから、屋外使用では常にバッテリー残量に気を配る必要があります。
このように簡易業務用無線機は扱いにくいのが難点で、さらにはIP無線機と比べて通信範囲が狭いというデメリットもあります。
そのためここ最近では、簡易業務用無線機からIP無線機への切り替えを検討するケースも増えてきています。
機種によってはGPSの搭載が可能
IP無線機は機種によってはGPSの搭載も可能です。
GPSとは「Global Positioning System」の略で、人工衛星を使った位置計測システムのことです。
GPS機能を搭載したIP無線機では、接続している機器の位置や距離、時刻などがリアルタイムで分かるようになります。
これによって従来の無線機では不可能だった、相手の位置を確認しながらの指示や誘導が可能になります。
もちろん複数人の位置の管理を同時にできるので、同時に複数人との通信のできるIP無線と非常に相性のよい機能です。
なお、GPSによる位置情報サービスを利用するためには、別途契約と設定が必要です。
通信料が定額
IP無線機は携帯電話の回線を使用するため、使用にあたっては携帯電話会社と回線使用契約を行う必要があります。
これによって毎月の通信料が発生しますが、通信料は月額定額制で、どれだけ使っても料金は一定です。
まったく使ってない月でも、月額料金分は請求されるという点には注意が必要ですが、コスト管理をしやすいのはメリットといえるでしょう。
なお従来の無線機の場合は、機器の購入で費用はかかるものの、通信自体には費用が発生しませんでした。
IP無線機では毎月の支出が発生するため、従来の無線機から移行する場合には、注意が必要です。
このようにIP無線機では、新たに通信費が費用として発生しますが、一方でIP電話ではレンタル利用という新たな使い方も可能です。
IP無線機は利用に免許が必要ないため、レンタルでの利用が可能です。
IP無線機をレンタルしている業者は複数あるので、いきなり導入するのが費用面で難しい場合は、まずはレンタルで試しに利用してみるのがおすすめです。
IP無線機と携帯電話の違い
携帯電話の通信網を使うこということで、IP無線機と携帯電話には違いがないように見えてしまいます。
しかしIP無線機と携帯電話には下記の2点によって大きく異なります。
• 同時に複数人と通話できる
• 通話がワンボタンで行える
IP無線機は、複数人との通話を同時に行えるのがメリットです。
集団に向けての通話が可能なので、指示出しや情報共有が必要な場合に非常に役立ちます。
また通話をワンボタンで行えるのも大きなメリットです。
携帯電話では、電話帳から登録されている通話先を探し出してその番号宛に架電するという煩雑な手順が必要ですが、IP無線機ではボタンを押すだけで通話できます。
また、携帯電話では相手が応答しないと通話が始められませんが、無線機ではボタンを押すだけで回線に繋がるため、こちら側から一方的に通話することができます。
その他のIP無線機も、誰かが発信するとそれを自動的に受けるようになっているため、手が離せないときでも連絡を聞くことができます。
最近では携帯電話の通話アプリもさまざまな機能を搭載しており、IP無線機のように複数人での音声通話が可能なものも出てきています。
機能面では業務用のIP無線機には敵いませんが、IPを使っている仕組み上、機能面での差は少しずつなくなってきているといえます。
IP無線機の活用例
IP無線機の機能を発揮できる場面にはどういったものがあるでしょうか。
ここでは具体的な活用例について紹介します。
スポーツイベントでの通信
マラソンや駅伝のような、会場が広範囲にわたり、スタッフが点在しなければならないようなイベントでは、IP無線機が非常に役立ちます。
ちなみにマラソンのコースは42.195kmで、駅伝の場合は片道100kmを超える場合もあります。
スタッフとスタッフの距離が大きく開くことになりますが、このような場合でも、IP無線機であれば問題なく通信が可能です。
またIP無線機では特定の機器のみを対象にしてグループ設定が可能です。
スタッフの役割ごとに通信を設定できるので、参加スタッフの種類や人数が多い場合に、連絡が取りやすいというメリットがあります。
花火大会などでの通信
花火大会なども大規模なものになると、来場者が数十万人規模になることがあります。
そのような場合は、河川敷などに広範囲の観覧席を設置することもあり、両端の間の距離が数kmにも及ぶことも少なくありません。
また大量の人出をさばく必要があるため、誘導用に大量のスタッフを動員する必要があります。
最寄り駅から会場までの間にスタッフを何人も配置する必要があり、交通状況や混雑状況などによっては、誘導するコースを変更する必要も出てきます。
また会場では、救急用なども含めて複数のグループ通信が必要になります。
このような大規模イベントでは、リアルタイムで何人ものスタッフと同時に会話をしながら対応を決定していく場面も多いため、IP無線機は最適の通信機器といえるでしょう。
長距離トラックなどの移動しながらの通信
IP無線機は、自動車などでの移動しながらの通信にも適しています。
運転しながら連絡を取りたい場合でも、IP無線機であればボタンひとつで簡単に通信できます。
また相手を指定する必要もないので、多人数を相手に情報共有したいような場合にも最適です。
さらにIP無線機にはGPS機能も搭載できるため、現在位置を相手に知らせることも可能です。
また、IP無線機による運転中の通話は、携帯電話による運転中の通話とは異なり、道路交通法による制限の対象とはならないため、安心して利用できます。
災害発生時の通信
災害が発生した際の通信手段としても、IP無線機は最適です。
IP無線機では、携帯電話のデータ回線を使って通信を行うため、通話回線と比較して通信がパンクしづらいのが特徴です。
災害の発生時には、大量の通話が生じることで、通話回線が繋がらなくなってしまうこともありますが、データ回線なら比較的もちこたえることができます。
まとめ
IP無線機はこれまでの無線機と比較しても飛躍的に機能が進化しており、インターネットやスマホなどのよい部分が反映された、非常に使いやすいものになっています。
また使用に関しても従来の無線機のような免許を必要としないため、誰でも簡単に導入できます。
IP無線機は非常に高機能で使いやすい一方で、非常に高価なのがネックです。
導入を購入で考えた場合、機器1台あたりの費用が数万円〜20万円台と非常に高くついてしまいます。
費用面の負担を極力抑えたい場合はレンタルでの導入がおすすめです。
レンタルであれば購入した場合と比べて1台あたりのコストがかなり抑えられるので、複数台での使用感も十分に試すことができます。
また、機器と通信料をイニシャルコストとして計上できる「Withcall Biz(IP300H)」もおすすめです。余計な機能をなくし、その分通信料を抑えたIP無線機で、コストパフォーマンスに優れたIP無線機となります。
本サイトでは、レンタル向けから購入用まで、さまざまなIP無線機を取り扱っています。
エントリー向けの機器から高機能なものまで幅広く揃えているのでぜひご覧いただければと思います。
レンタルでの利用も含めて、本格的な導入について検討してみていただけると幸いです。