IP無線とは、携帯電話の通信回線を利用して通話を行うことができるシステムです。 従来の無線よりも機能性が向上し、低コストで使用できるIP無線は、幅広い分野で利用が拡大しています。この記事では、IP無線とはどんなものか、携帯電話との違いなどの基礎知識から活用方法のご紹介をしていきます。
IP無線に興味がある方や、今後IP無線を利用していきたいと考えている企業担当者の方は、ぜひ最後まで読んで参考にしてください。
何かご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
IP無線とは
まずは、IP無線機とはどんなものなのか、基本的な概要を解説していきます。
特徴1:日本全国の通話に対応している
従来の簡易業務用無線機は、通話や電波が届く範囲のみ使用可能であったため、1〜5km程度の範囲が限界でした。しかし、IP無線機は、携帯電話の通信回線を利用しているため、国内のごく一部を除いて、どのエリアからでも通話が可能です。 また、特定のIPアドレスに音声をデータ送信するため、従来の無線機と違い、電波の混信の心配なく広い範囲で通話できることが、IP無線機の最大の魅力です。
さらに、携帯電話の通信回線の機能向上にともない、地下や壁などの障害物にも強く、物理的な環境に左右されず使用することが可能です。
特徴2:免許や登録申請なしで利用できる
IP無線機は、利用に関して免許や登録申請の必要はありません。
従来の無線では、1Wの出力を超えるトランシーバーを「簡易業務用無線機」として利用するために「無線局免許の申請」が必要でした。これは電波法で義務付けられています。 タクシーなどの無線の場合でも、利用するには無線従事者免許を取得する必要があり、これは、業務であるかないかは関係なく、アマチュア無線においては「アマチュア無線技師」の資格が必要です。
一方、IP無線機の場合は免許や登録申請なしで利用できます。免許や登録申請が必要なく、携帯電話感覚で使用できる点が、IP無線機の魅力です。
特徴3:GPS搭載の機種がある
IP無線機の機種によっては、GPS搭載が可能なものがあります。GPS(人工衛星を使った位置計測システム)機能を搭載することで、接続している無線機の位置情報や時間をリアルタイムで知ることができます。 この機能によって、従来の無線では難しかった相手の位置情報を確認しながら、指示や誘導を具体的に行うことが可能となります。
また、複数人の位置情報も管理できるため、複数人との通話が可能であるIP無線機に搭載することで、効率よく業務を進めることもできるでしょう。 ただし、すべてのIP無線機でGPSが搭載できるというわけではなく、GPS機能を利用するためには別途契約を行う必要があることに注意が必要です。
特徴4:月額利用料が発生する
IP無線機は、携帯電話の通信回線を利用しているため、携帯電話会社と回線の使用契約を行う必要があります。よって、月額利用料を支払うことになりますが、利用料は定額制のため、使用量によって金額が変わることはありません。 従来の無線では、機器の購入費用はかかるものの、利用料はとくに必要がなかったため、これからIP無線機に交換を検討されている方は、この点において注意が必要です。ただ、どれだけ使用しても月額利用料が定額制であるため、経費管理は簡単です。
またIP無線機は、月額利用料は必要ですが、携帯電話のように使用でき、全国どこでも混線などの心配なく通話ができることなど、魅力的な機能を備えています。
特徴5:通信エリアは携帯会社に依存する
携帯電話の通信回線を利用するしていることにより、IP無線機の通信エリアは、利用する携帯電話会社(キャリア)のネットワークに依存しています。 そのため、キャリアの基地局のエリア内での通信は可能ですが、エリアを外れてしまうと通信が難しくなる可能性があります。
よって、携帯電話の契約時と同様に、使用したい場所や地域において、契約するキャリアの基地局があるのかどうか、通信が不安定にならないか、契約前に確認する必要があります。 もし、通信面に不安がある場合は、複数のキャリアを利用できるデュアルSIMに対応したIP無線機の利用がおすすめです。もし通信障害が発生しても、別の会社の回線を利用することができるため、安定して使用できます。
従来の無線機・携帯電話との違い
ここまで、IP無線機の概要を解説してきました。ここからは、従来の無線機や携帯電話と、実際どのような違いがあるのかをご紹介していきます。
従来の無線機との違い
IP無線機は、携帯電話会社の通信回線を利用するため、全国どこからでも通話ができることが最大の魅力です。また、従来の無線機とは違い、利用するために免許や資格取得の必要もありません。 従来の無線機においても、利用に際して資格などが必要のないものもありますが、IP無線機と比べて、通信範囲が近距離に限定されるという特徴があります。
ただし、携帯電話回線のエリア外においても使用でき、電気消費が少ないため乾電池でバッテリーをまかなえたりするため、イベントや災害時などによく利用されています。 使用する状況や環境によって、従来の無線機とIP無線機との使い分けを行うとよいでしょう。
携帯電話との違い
IP無線機と携帯電話には「通話方法の違い」があります。 IP無線機の通話方法は、PTT(Push to talk)という半二重通信の一種を採用しており、携帯電話は、全二重通信での通話となっています。
全二重通信の特徴としては、まるで対面で会話している状態と同様の感覚で、同時に話したり聞いたりすることができることです。 また、通話開始時に受信側の受話操作が必要であり、業種によっては、受話操作が業務効率を左右する場合もあるため、比較検討する場合には、その点に注意が必要です。
半二重通信の一種であるPTT(Push to talk)は、送信または受信のどちらかしかできない通話方式です。つまり、相手が話しているときは自分は話すことができず、逆に自分が話しているときは、相手は話すことができません。 IP無線機など多くの業務用無線機は、この通話方法を採用しています。携帯電話のように、受話操作の必要がないため、いつでも音声で届けることができ、指示や連絡が一方向であるため、情報が伝わりやすいというメリットがあります。
また、IP無線機は、同時に複数人と通話できるという特徴もあります。よって、携帯電話よりもグループコミュニケーションにおすすめの通話方法ともいえるでしょう。
ジャパンエニックスでは、全国(日本国内)トランシーバー5選をご紹介しています。携帯回線と無線LANを搭載したタイプやGPSの位置情報搭載タイプなどがあります。あわせてご覧ください。
IP無線の活用シーン
では実際に、IP無線機はどのような業種が、どのように活用しているのかをご紹介していきます。IP無線機の導入を検討中の方は、ぜひ参考にしてみてください。
活用シーン1:イベント・警備
IP無線機を活用することで、イベントや警備などの大勢の人が集まる現場において、スタッフ間で手軽にコミュニケーションをとることが可能です。
従来の無線機は、ひとつのチャンネルを複数人が利用すると、常に誰かが発信している状態となり、緊急で対応しなければならない場合にも、待つ必要がありました。また、会場が広く電波が届かない場合もあるため、携帯電話との併用や、電波が届くところまで移動する必要がありました。
しかし、IP無線機では、通信範囲が広く、複数箇所から同時に発信が可能であるため、優先度が高いものを必要なタイミングで発信することができます。これにより、緊急時対応をスムーズに行うことができるため、イベント運営や警備の品質を向上させることができます。
活用シーン2:物流・運輸
移動をともないながらコミュニケーションをとる必要がある、物流・運輸の場面において、IP無線機は、車を停車させることなく通話が可能であるというメリットがあります。 また、従来の無線機のように距離が離れ、通信可能なエリアから外れてしまい、連絡を取ることができない、ということもありません。
これにより、常に移動している物流・運輸において、現場にスタッフが集まらなくても、遠隔で指示出し・指示受けが可能となり、コミュニケーションの円滑さだけでなく、人的リソースの確保にもつながっています。
活用シーン3:建設現場
建設現場では、作業中で常に手が離せない状況下においても、IP無線機を活用することで、スタッフ間の連携をスムーズに行うことが可能となります。
IP無線機はハンズフリー通話が可能であり、一斉送信機能を活用することで、優先度の高い情報を適切なタイミングで伝達することができます。そのため、緊急対応など、作業スタッフへの迅速な指示や情報共有を行うことができ、安全管理につながっています。
活用シーン4:小売業
スーパーマーケットや百貨店などの小売業においても、IP無線機を活用することで、スタッフ間の連携をスムーズにすることができ、お客様の要望に迅速に対応することが可能となります。 多くのお客様が来店する店内では、多種多様な要望に対して、スタッフ間で商品の在庫状況などを適切に情報伝達する必要があります。
IP無線機は、接客対応しつつハンズフリー通話が可能であるとともに、複数箇所から同時に発信が可能なため、多数のお客様対応を行うことが可能です。スタッフ連携強化により、迅速な対応が可能となることで、お客様満足度にもつながります。
活用シーン5:製造業
製造業においてもIP無線機の活用により、常に作業を行いながらでも、スタッフ間でのコミュニケーションを行うことが可能となります。 製造業は、さまざまな製造ラインや業務分担が行われ、一部の業務のトラブルが発生した際は、ほかの製造ラインにも迅速に情報を共有することが必要です。
IP無線機は、作業の手を止めることなく、ハンズフリー通話を行いつつ、複数人に優先度の高い情報を発信することができるため、情報伝達の遅れを防ぐことができます。
活用シーン6:医療機関
医療機関においても、IP無線機はスタッフ間の連携強化に役立てることができます。患者の急変時対応だけでなく、スタッフへの暴力やクレームなどの対応においても、即座に情報を発信できるため、緊急処置や対応などの遅れを防ぐことができます。 また、院内放送などを使用せずに、IP無線機でスタッフのコミュニケーションを行うことで、来院している患者に不安を感じさせることなく対応が可能です。
PHSを活用している医療機関も多いですが、患者の処置など手を離せない場面の多い医療機関において、IP無線機はハンズフリーで通話することができるため、とても便利です。
活用シーン7:ホテル・旅館
ホテル・旅館においても、IP無線機を活用することで、多くのお客様からの要望をスタッフ間で即座に伝達することが可能です。 お客様の要望やクレームなど、接客スタッフからバックヤードまで、複数人が同時に情報共有することで、混雑時やトラブル時にお客様対応をスムーズに行うことができます。
活用シーン8:BCP対策
IP無線機は、災害時などにおける事業継続や、早期復旧のためのBCP対策としての活用も可能です。損害を最小限に抑えるために、IP無線機やIP無線アプリを活用することをおすすめします。 IP無線アプリには、強制起動機能のあるものがあり、対象のグループメンバーのアプリを強制起動させ、発信者の声をメンバーに届けることができます。これにより、安否確認や復旧のための人員確保を行うことができます。
IP無線を導入するには
IP無線機のメリットや活用方法を理解したうえで導入を検討する場合、購入またはレンタルする方法があります。 購入とレンタルで迷う場合には、利用頻度と期間で考えるとよいでしょう。また、長期的に活用する場合において「機材費・通信費・メンテナンス」を考慮に入れて、検討することをおすすめします。
購入する
IP無線機を長期的に毎日活用する場合には、購入を検討してみるとよいでしょう。購入のメリットとしては、好きな機種を選択でき、新品状態で利用できることです。大量購入する場合には、割引をしてくれる場合もあります。 メンテナンスや保証制度などが充実している企業を選べば、故障対応も安心です。ただし、機材費・通信費・メンテナンス費などのコストはある程度必要だと理解しておきましょう。
レンタルする
短期的なIP無線機の活用においては、レンタルをおすすめします。レンタル費用はかかるものの、購入コストよりも低く抑えることが可能であり、メンテナンス費用の心配がありません。イヤホンマイクや予備バッテリーもついており、格安で利用することが可能です。
ただし、長期的にレンタルする場合には、ランニングコストが大きくなってしまうため、その点は注意が必要でしょう。
ジャパンエニックスでは、人気機種やメーカー別にIP無線機を取り扱っています。通常の無線機型やアプリ、車載型のトランシーバーもレンタル・販売中です。ぜひあわせてご覧ください。
まとめ
IP無線機は、従来の無線では困難であった広いエリアでの通信が可能となり、免許も不要のため、より気軽に活用できるようになったことにより、幅広い分野において導入されています。 これからIP無線機の導入を検討されている方は、ぜひジャパンエニックスにご相談ください。多くの企業様や官公庁などへの導入をサポートしてきた実績とノウハウで、さまざまな業種・業務内容に合わせて、適切なIP無線機のご提案をさせていただきます。 ジャパンエニックスは、社員一人ひとりが「無線機」のエキスパートです。快適なコミュニケーション環境の実現に向けて、無線機の販売からレンタル事業、修理まで行っております。 オンライン相談も行っておりますので、まずは職場のコミュニケーションに関するお困りごとを、お気軽にご相談ください。