さまざまな種類がある業務用無線機の中で、災害に強く普段使いから緊急時まで幅広く使えるのがMCA無線です。
MCA無線は、一般財団法人移動無線センター(以降MRC)によって1982年10月にサービスを開始して以降、ガス、水道、警備、清掃、物流、医療といったあらゆる業界で活用されている無線機です。
この記事ではMCA無線の特徴や災害に強い理由、広域通信ができるIP無線機とMCA無線機との違いを解説しています。記事の後半では、おすすめのIP無線機とMCA無線機も紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
何かご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
MCA無線とは
MCA無線とは、800MHz帯の電波を利用した一般業務用の移動無線システムです。特定の周波数を複数ユーザーで共同利用する形式から、マルチチャンネルアクセスといわれています。
MCAは、一般の通信網が混雑してつながらない場合に、業務用の周波数に切り替えて利用できるため、地震や台風、洪水といった停電をともなう災害が多い日本では、通信手段の確保に非常に効果的です。
ここでは、mcAccesseとMCAアドバンスについて詳しく解説します。
mcAccesseとは
mcAccesse(エムシーアクセスイー)とは、一般財団法人移動無線センターが提供しているMCA無線の名称です。北海道から沖縄県まで幅広いエリアで利用できます。
全国で使える自営の業務用無線はmcAccesseだけです。地域密着型の企業はもちろん、全国展開している企業でも使える点が特徴です。東日本大震災、熊本地震といった大規模な災害の発生時に活用された実績により、全国の自治体の防災無線として導入が進んでいます。
また、不在メッセージを残しておける機能や、聞き逃しを防ぐための録音機能といった、便利機能も用意されており、非常に便利です。バスやタクシーのような、従業員と乗客との距離が近く、トラブルに巻き込まれる危険性のある職業では、犯人に知られず緊急通報を行える機能も大いに役立っています。
MCAアドバンスとは
MCAアドバンスとは、通信エリアの広さや高速通信、高いセキュリティ性が特徴のMCAアドバンス「プラス」の略称です。デジタルMCA無線のつながりやすさ、安定性を維持したまま、インフラ設備を共同利用することで、コストを抑えたままさまざまな便利機能が使えます。
チャット機能やリアルタイムの映像配信など、スマートフォン型の端末を用いることで、従来の無線機では実現できなかったコミュニケーションが可能です。
MCA無線が災害に強い理由は?
MRCでは、全国117箇所の中継局を管理しており、いずれも1981年以降の新耐震基準に基づいて設計・建設されているほか、定期的にメンテナンスを行っています。
また、中継局には非常用の発電機が備えられているため、近隣の発電所からの給電が停止した際も、安定した無線通信が可能です。
災害時は多くの利用者が家族や恋人、職場などに安否確認の連絡を一斉に行うため、通信回線が混雑してつながりにくくなります。MCA無線では、複数の周波数の中から空いたチャンネルを自動的に選択して接続するため、緊急時にもつながりやすい状態を維持できるのです。
東京都新宿区にあるMRCの監視センターでは24時間365日有人の監視を行っており、いち早く異変に気付いて対処できます。首都直下型地震等で、東京の監視体制が維持できなくなった場合は、大阪府にある監視センターにシステムの統制を切り替えることで、安定供給を実現しています。
広域通信ができる「IP無線機」と「MCA無線機」の違いは?
IP無線機とMCA無線機はどちらも広域通信に適した通信方法です。どちらも30km以上離れた地点からでも安定した無線通信が行えます。類似点がある一方で、仕組みや用途など明確な違いもあるため、ここではIP無線機とMCA無線機の違いを解説します。
特徴(メリット)や機能性・仕組みの違い
IP無線機 | MCA無線機 | |
---|---|---|
特徴 | ・通信が暗号化されており、混信トラブルが発生しない ・通信距離に制限がない ・誰でも簡単に利用できる | ・契約することで全国での通信が可能になる ・専用チャンネルによって回線混雑を避けられる ・利用には免許の申請が必要 |
機能性 | ・音声通話 ・チャンネル(周波数)設定 ・位置情報管理 | ・音声通話 ・チャンネル(周波数)設定 ・位置情報管理 |
仕組み | 大手通信事業者のインターネット回線を利用する | 全国の中継局を介して経由して通信を行う |
IP無線機は、大手通信事業者のインターネット回線を利用して無線通信を行います。音声データをパケットに変換すると通信を行える仕組みです。
携帯電話の回線を利用しているので、電波のつながる限り、全国各地で通信ができます。暗号データでの通信ができるため、盗聴・通信傍受の心配がありません。利用に特別な免許は不要で、誰でも使える点がメリットです。
一方MCA無線機は、全国114箇所に設置された中継局経由で通信を行う仕組みです。空いたチャンネルを自動的に割り当てるため、混信によるノイズや、回線の混雑に悩まされることはありません。ただし、無線局の免許が必要になるので、契約の際は把握しておきましょう。
通信距離、条件の違い
IP無線機 | MCA無線機 | |
---|---|---|
通信距離 | 全国 | 1つの中継局につき半径20km以上 |
通信の条件 | 携帯電話の電波が届くエリア | 中継局でカバーできるエリア |
IP無線機とMCA無線機はどちらも幅広いエリアで利用できる無線機です。IP無線機は携帯電話の電波を利用するため、4G・LTE・Wi-Fiのどれかがつながれば通信できます。圏外になりやすい山間部や地下を除き、全国で利用できるため、全国支店の企業や運輸業に適しています。
一方のMCA無線機は、中継局1つにつき20〜40kmをカバーできます。使用したい地域の中継局と契約する形となっており、より多くの中継局と契約することで通信距離を広げられます。
「関東地方にだけ支店があるので全国利用は必要ない」といった、ビジネスの規模によって調節したい場合は、MCA無線機がおすすめです。
利用用途の違い
IP無線機 | MCA無線機 |
---|---|
・長距離走行するトラック、バス ・タクシー ・野外で行われる大規模なイベント ・災害時や緊急時 | ・自治体や公共事業 ・医療機関 ・災害時や緊急時 |
IP無線機は全国で通信可能なため、日本全国の物流を支える運輸会社で利用されています。トラックやバスは、本社や到着先と連絡をしたり、緊急通報を行ったりする関係で、全国で使える無線機が必要です。
近年の技術発展により、GPS機能を活用して位置情報を発信することでタクシーの配車にも利用されています。
一方のMCA無線機は、MCA無線機は緊急時の通信に強いことから自治体や医療機関、災害時で多く使われている無線機です。ただし、使用したい地域の中継局と契約が必要になることから、複数地域でご利用したい場合コストが割り増しになってしまうため、IP無線に置き換える方が増えています。
サイズや料金の違い
IP無線機 | MCA無線機 | |
---|---|---|
サイズ | ・ハンディ型(携帯タイプ) ・車載型 ・半固定型 | ・ハンディ型(携帯タイプ) ・車載型 ・半固定型 |
料金形式 | ・短期レンタル ・長期レンタル ・購入 ・リース | ・購入 ・リース |
IP無線機とMCA無線機は、どちらも多種多様なタイプが販売されており、サイズは大小さまざまなものがあります。ハンディ型は手に収まるサイズで携帯性に優れ、ドライバー業務で使う場合は車載型など、用途に合わせて最適なものを選べます。
IP無線機は短期・長期レンタル、または購入といった利用手段があります。1台あたりの料金の目安は以下の通りです。
短期レンタル | 1日あたり約3,000円 |
長期レンタル | 1ヶ月あたり約9,000円 |
購入 | 約90,000円(端末費用) |
短期レンタルよりも長期レンタルの方が、長期レンタルよりも購入費用の方がコストを抑えられます。ただしレンタルの方が常に最新機能を使えるため、金額か利便性で選ぶのがおすすめです。
一方のMCA無線機は業務に使われる無線機なので、購入またはリースの利用ができます。価格相場としては以下のようになります。
ハンディタイプ | 1台あたり約18~20万円 |
据え置き型 | 1台あたり約10万円〜 |
※月額2,000~2,500円程のランニングコストがかかります。
商品の一部紹介
ここでは、おすすめのIP無線機とMCA無線機を1つずつ紹介します。
IP無線機:IP502H
IP502Hは、携帯型のIP無線機で初めてNTTドコモ(3G/LTE)とauの通信回線(4GLTE)を利用できるようになった無線機です。どちらかの回線が混雑した時はもう一方のキャリアに変更するだけで回線の混雑を避けられます。
240gと軽量で持ち運びに優れています。電源にはリチウムイオンバッテリーと単三型アルカリ乾電池を搭載しており、1度の充電で17時間の運用が可能です。
IPX7というトップクラスの防水性能を誇っているほか、完全な防塵機能(IP6X)を有しており、災害時の過酷な環境にも耐えられる設計になっています。
スピーカー出力は900mWと大音量を出力できるため、工事現場や野外のイベント会場など、騒音下でも通信可能です。同時通話や割り込み通話機能も搭載しているため、複数人での利用もできます。
GPSを搭載しており、PC・タブレット・スマートフォンといったデバイスから位置情報を把握することも可能です。
MCA無線機:LEX L11j
LEX L11jはMCAアドバンスを搭載したスマートフォン型の無線機です。リチウムイオンバッテリーを搭載しており、1度の充電で20時間と長時間の運用ができます。電源を確保しづらい災害時でもほぼ1日使えるため、緊急時に備えておきたい無線機です。
IP502Hと同じく高い防水性能(IPX7)と完全な防塵性能(IP6X)を誇ります。アメリカの国防総省MIL規格に準拠した耐環境性も兼ね備えている点が優秀です。周波数はドコモLTEを使用しており、安定かつ高速通信を可能にしています。
カメラとGPSを搭載していることから、リアルタイムの映像配信や位置情報の把握もでき、直感的な操作が特徴的なLEX L11jは、スマートフォンに近い使い方が可能です。
まとめ
MCA無線は、自動的に空いているチャンネルを選択して割り当てる形式のため、災害時でも混雑を避けて安定した通信を確保しやすい無線機です。緊急時に安定稼働できることから、自治体や医療機関で用いられています。
MCA無線機と同じく広域通信に優れたIP無線機は、インターネット回線を利用しており、暗号化に優れています。携帯電話の電波が入るエリアであれば全国どこでも通信可能です。MCA無線と比べると低コストで利用できるため、MCA無線機からIP無線機への置き換えが進んでいます。
IP無線機はとくに免許は必要ありませんが、MCA無線機を利用するには無線局の免許が必要です。手軽さ・コスト重視であればIP無線機、ビジネスの用途で選ぶならMCA無線機がおすすめです。
無線機の導入を検討している方は、ジャパンエニックスまでお気軽にお問い合わせください。