無線機は便利なツールで業務用としての利用はもちろん、最近ではレジャー目的での個人利用も目立ってきました。
また、種類も豊富でIP無線機や特定小電力トランシーバーなど、さまざまなニーズに対応した無線機が私たちの生活を支えています。
しかし、電波を扱う無線機の使用にはルールを規定した電波法の遵守が求められており、規定に沿った使い方をしないと「不法電波や違法無線機を使用した」として罰則を科されるおそれもあります。
そこでこの記事では、不法電波についての解説と違法無線機の見分け方、罰則について紹介します。
何かご不明な点がございましたら、お気軽にお問い合わせください。
不法電波とは
不法電波とは、不法無線局から発せられた電波を指します。
後述しますが、不法無線局とは免許を取得していない無線局を指しており、この無線局から発せられた電波はすべて不法電波に該当します。
無線局が発する周波数および電波の使用方法は電波法に定められており、規定された方法で利用されないと、適切に使用されている無線機に混信してしまう可能性があるのです。
そのため法律によって用途を指定して秩序を作り、用途外の使用を不法電波と見なし取り締まることで、適正な電波の使用を促しています。
不法無線局とは
不法無線局は大きく3つの種類に分けられます。
このトピックでは、この3つの不法無線局について詳しく解説していきます。
不法市民ラジオ
不法市民ラジオとは、アメリカへの輸出を想定して製造された無線局です。
しかしアメリカの市民ラジオの規格が変更されたため販売が不可能となり、現在はどの地域でも利用できません。国内では規格違いのため利用できないとわかっていたにも関わらず、一部のメーカーが市場に流出させたため一般市民の手に渡るようになりました。
そして、この不法市民ラジオは高出力とチャンネルが豊富な魅力があったため市場に多く出回り、結果として国内の通信問題を発生させる大きな原因の1つとなりました。
不法パーソナル無線
パーソナル無線とは昭和57年に導入された無線局です。簡易な手続きで開設できる点がウリで、手軽に通信したい当時の国民の間で広く普及した無線局になります。
しかしパーソナル無線が広まる一方で、想定された周波数を逸脱させたものや数少ないチャンネルを独占するものが散見されるようになりました。
このような仕様を持つ無線局は不法パーソナル無線と呼ばれており、もし使用すれば処罰の対象となります。
現在では以前のようにパーソナル無線が普及しているわけではないため、あまり目にすることはないかもしれませんが、中古品として出回っているケースも多くあります。中古のパーソナル無線を利用する際は、不法なものでないかしっかりとチェックしましょう。
不法アマチュア無線
不法アマチュア無線と判断される無線局にはさまざま種類があります。
免許を取らずに不法開設しているものや不法改造されているもの、アマチュアバンド外の周波数を利用するものなど多岐にわたります。
消防や警察などの公的機関が通信を行う際に利用する周波数は、アマチュアバンドに隣接しているため、アマチュアバンド外の周波数を利用すると公的機関の電波と混信してしまうおそれがあります。
もし、消防や警察が一般市民から通報を受けたときに混信してしまうと、対応が遅れて被害が拡大してしまうでしょう。このようなリスクがあるため、不法アマチュア無線の利用は非常に危険だといえます。
違法無線機を使用した場合の罰則
日本国内の規定からはみ出た無線機を使用すると電波法違反となり処罰および罰則の対象となります。罰則としては「1年以下の懲役もしくは100万円以下の罰金刑」となっています。
さらに、違法無線機の使用によって他の公共の電波を阻害した場合は「5年以下の懲役もしくは250万円以下の罰金刑」に処されます。
また、違反に当たるケースは主に3つあります。
違法無線機を使用した場合
1つは、違法無線機を実際に使ってしまった場合です。
このケースは文言通りの内容で、日本国内で認められていない無線機を使用すると法律違反になります。
未申請の無線機を使用した場合
2つ目は、電波法の要求仕様には沿っているものの、総務省に未申請である無線機を使用した場合です。
電波法に抵触しないためには要求仕様を守るだけでなく、そのような無線機を利用している旨を総務省にきちんと報告する必要があります。
違法無線機の所持
3つ目は、使用できる状態にある違法無線機の所持です。違法無線機を使っていなくても、使用可能な状態のものを持っているだけで違反となってしまうのです。
違法無線機の特徴
違法無線機には判別しやすい特徴がいくつかあります。
そこでこのトピックでは、日本国内の規定から外れた無線機によく見られる特徴を解説します。
長距離通信
電波法の規定を守れていない通信機には長距離通信が可能なものが多いです。その距離は非常に長く、10kmから30kmほどだといわれています。一般的な無線機の通信距離が50mから5km程といわれているため、その差は歴然です。
このように通信距離が長い通信機は海外製のものであることが多いです。そのため、海外では違法とならない正規の規格ですが、日本国内では認可されないため違法無線機と判別されてしまいます。
そのため、海外製の無線機を使う機会があるときは通信距離を事前に確認しておきましょう。また、長い通信距離で無線機を使いたい方はIP無線機の利用がおすすめです。
価格
通信距離に対して価格が安すぎる無線機は日本国内の規格にマッチしていない可能性が高いです。
一般的に通信距離の長さと価格の高さは比例し、距離が長くなればなるほど価格は高くなる傾向にあるからです。
たとえば、通信距離が50mから200m程度の特定小電力トランシーバーの価格相場は10,000円前後です。また、一般的なトランシーバーの価格相場は50,000円から120,000円になります。
こうした傾向があるにもかかわらず、通信距離が数十kmに及ぶ無線機が5,000円から20,000円程度の価格で流通していることがあります。
この場合、該当の無線機は電波法を違反している可能性が非常に高いため、注意が必要です。
販売方法
店舗販売ではなく、オークションやフリマサイトでの販売が中心となっている無線機は違法無線機である可能性があります。
売り手自身が「自分の販売している通信機が日本国内の規定を逸脱している」という認識をしっかりと持っているからこそ、手離れをよくするためにインターネット販売を行っているのです。
このような方法で売られている無線機は、小さな文字で「国内では利用できない」といった注意書きがされている場合もあります。
オークションやフリマサイトで無線機を購入する際には、小さな文字で注意書きがないかしっかりとチェックしましょう。
また、注意書きに気づかず誤って使用してしまった場合は、故意による使用でなかったとしても電波法違反となってしまうため、気を付けましょう。
違法無線機の見分け方
違法無線機は現在も市場に出回っており、見分け方を知らないと意図せず使用してしまう可能性があります。
そこでこのトピックでは、違法無線機の見分け方について解説していきます。
周波数について
まず目をつけるべきポイントは無線機の周波数です。
一般的に無線機にはそれぞれで使用可能な周波数帯が区分けされています。そして、混信や誤作動の防止の観点から区分け外の周波数の利用は禁止されています。
したがって、利用する予定の無線機の周波数を事前にチェックすれば、そのツールが違反対象であるかどうかの判別が可能です。もし、規定された周波数帯に対応していなければ国内では使えないものである可能性が高いため、使用は控えましょう。
また、海外製品の利用を行う際にも注意が必要です。海外製品の周波数帯は日本で定められている規定とは基本的にずれているため、性質上の問題で電波法違反と判断されてしまいます。
しかし、海外製品でも日本規格に対応しているものもあるため、海外製の無線機を使いたいときは購入の際に周波数帯の適性をチェックしておきましょう。
出力について
出力の大きさから無線機が電波法の規定にマッチしているかどうかをチェックできます。というのも出力に関しても電波法によってその上限が規定されているからです。
たとえば、いわゆる「免許を必要としない無線局」にあたるトランシーバーなどは出力上限が1000mWと定められています。
規定に該当しないとされる無線機は出力が異常に大きくなっているため、出力がどの程度になっているかを調べることで国内での使用可否の判断ができます。
また、周波数と同様に海外製の無線機の出力は日本の規定にマッチしない場合が多いです。そのため、この点に気づかずに利用してしまうと電波が強過ぎて周波数を独占してしまうといった問題を起こしかねません。
もし、海外製のものを使う際には、周波数だけでなく出力の面にも目を向けてから利用しましょう。
改造について
無線機の改造の有無の確認も違法無線機かどうかを判別する際には有効です。正規の無線機の出力や周波数を改造して、意図せずして違法無線機を作ってしまうといった事例は珍しくありません。
改造された無線機は出力や周波数帯が拡大されている場合が多く、混信や通信妨害、周波数の独占などさまざまなトラブルを引き起こす可能性があります。
無線機を使いやすくするためのちょっとした改造でも、周波数や出力に大きな影響を与えるケースは少なくないため、基本的に改造は行わないようにしましょう。
まとめ
違法無線機や不法電波は私たちが思っている以上に身近に潜んでおり、無線機についての正しい知識を持っていないと大きなトラブルに見舞われる可能性が高くなります。
とくに違法無線機は中古市場で出回っている場合が多く、出力や周波数に気を配っていないと誤って購入してしまうこともあります。
もし気づかずに違法無線機をそのまま利用してしまうと、法律違反となり処罰の対象となってしまいます。
そのため、無線機と頻繁に関わる機会がある方は日頃から電波法違反や不法電波に対する意識を高く持ち、不法行為に手を染めないように努める必要があります。
この記事でご紹介した違法無線機の特徴や見分け方を覚えておけば、トラブルに巻き込まれる可能性は大きく減るため、ぜひ参考にしてみてください。